水処理とは

仮設水処理事業を行うセイスイ工業株式会社は、2021年12月に水処理に関する「2021年の総括および2022年の展望レポート」を発表いたしました。今後水処理の重要性はどのように高まっていくのか、レポートから抜粋してまとめました。

●水処理は工場統廃合の裏側で大きな役割を担う

まず総括として、近年、工場の統廃合や閉鎖が多くなってきています。例えば製鉄工場の閉鎖が挙げられます。中国の製鉄業における過剰生産の影響を受け、日本国内での製鉄工場が縮小しつつあります。その製鉄工場を閉じる際に出る排出物の処理(水処理)の需要が高まり、当社も大手製鉄所が持つ2箇所の工場において、水処理を計画中です。

他にも、乳製品工場の閉鎖にも携わりました。ビジネス環境のグローバル化、日本国内も含めて競争が激化していくなかで、乳製品関連のビジネスも変化を迫られています。今までは数多くの商品を国内に複数ある小さな工場で製造していましたが、現在ではそれら小さな工場を閉鎖し、大きな工場で売れる商品のみを製造する流れに変わりました。

このように、工場の統廃合が進むと工場の処理作業が発生します。これが2021年含めた近年の動向の一つと言えるでしょう。

●工場や下水処理場の水処理設備 補修需要の増加

1950年から1960年にかけて、日本が高度経済成長期だった頃、多くの工場施設が建てられました。そこに設置される排水処理施設は約30年経過後を目処に建て替えられるのが一般的です。しかし、この建て替えには多額の予算が必要であり、企業にとっては大きな負担です。そのため、建て替えを躊躇し、手がつけられていない現状も存在します。

また下水処理場においては、少子高齢化による自治体予算の問題もあり、工場と同様に手がつけられていない施設もあります。しかし、当社が行う「仮設水処理」というソリューションであれば、大規模な建て替えが不要であり、必要な補修箇所だけ最適な費用で対応できる、ということから、補修を行う需要が増加しました。

今までの常識では「水処理=プラントを作る」でしたが、例えば季節的要因で一時的に排水の処理量が増え、既存のプラントでは処理が追いつかない場合、仮にもう一つプラントを建てるとするとコストも時間も大幅にかかります。現地に仮設プラントを設置し、必要な時に必要な期間だけ水処理が行えれば非常に効率的で、コストも下げられます。

●災害や世界的な半導体不足に対応する仮設水処理

現在のところ、仮設で水処理ができる会社は当社が唯一と考えています。特に、大規模災害時は、バキューム車では廃棄物の量が多すぎて処理しきれないこと、プラントを建てるには大掛かりでコストも高いこと、そして限られたスペースでスピーディーな対応が求められますが、そうした厳しい条件の中でも、水処理の知恵を出すのが当社の役割ということを強く感じました。

また、コロナ禍の影響で、工場の操業停止や物流の停滞など、サプライチェーンが混乱しました。その結果引き起こされた世界的な半導体・材料不足により、それら材料等を利用している施設に関していえば、例えばモーターがパンクし水処理ができない状態になったとしても、故障対応ができません。その結果、一時的に仮設水処理施設を利用するケースも増えています。

●水処理プロセスに「CO2削減・環境保全」の考え方を

従来のバキューム車による廃棄物運搬と比較した際、仮設水処理なら、CO2排出量を減らすことができます。仮設水処理施設がなかった場合、バキューム車を何度も往復させ廃棄物運搬をすることになるため、CO2排出量も膨大になります。

また、土木工事で堀削作業をする際、必ず発生するのは泥水処理の問題です。こういった状況でも、仮設水処理プラントで泥水を水と固形物に分離し、廃棄物量を劇的に削減、水の再利用を図ることができます。ゴミが発生する前にゴミの量を減らす”Reduce”の部分を、その施設内で進めることができるのです。

これからますます重要となるESG・SDGsというテーマに対応したソリューションとしても仮設水処理プラントの需要があると考えています。

●水処理という方法に柔軟性を持たせる

今後は「脱炭素」の流れもあり、「エネルギーを使わずに処理できる方法」へシフトしていくと考えられます。

従来の方法では、水処理設備が故障し、修理できる段階であっても、他に選択肢がなかったため新しく施設を作り直すしかありませんでした。車で例えるなら、エンジンの一部が壊れて修理で済むにも関わらず、高い費用をかけて新車を購入するようなものです。新たに施設を作り直すにはコストがかかり過ぎてしまいかつ環境面からは膨大なCO2排出が行われます。

一方で、仮設水処理というソリューションでは、50年前に建てられた古い施設であっても、建て替えの必要はなく、全体の構造を維持しつつ、部分的に補修やアップデートが可能です。このようなバイパスがあることで、前述したCO2排出削減はもちろんのこと、工場稼働が停止してしまうリスクも減少します。

工場が古くなれば、当然補修が必要になります。しかし、このような補修を行うためには、工場の稼働を止める必要も出てくる場合があり、その状況下では補修は後回しされてしまう現状があります。当然、補修せずに古くなればなるほど、工場の一部の機器や部品が急に壊れるリスクは高まります。そうなれば、生産も全て止める必要があり、大きな損害が発生します。

バイパスがあることで、このような事態を未然に防ぐことが可能です。仮設水処理は、このように柔軟な対応を実現し、「継続性」を高めるソリューションなのです。