下水道展2026 特別連載|第3回 街全体が、有機物の微粒子に覆われていた — 東日本大震災・仙台市内/多賀城市の下水処理場
5つの現場でたどる、セイスイ工業の仮設水処理の歩み
「臭い」が時間とともに薄まらない、という違和感
当社が現地に初めて入ったのは、震災から1ヶ月から1ヶ月半ほど経った頃のことでした。それまでは、現地に近づくこと自体が難しい状態が続いていました。
到着して最初に印象に残ったのは、街そのものの「匂い」でした。下水処理場だけではなく、街全体に下水と汚泥が混じったような匂いが残っていました。匂いは時間とともに薄まる、と思いがちですが、現場ではむしろ逆でした。
引いていったはずの水が、街の至るところに有機物の微粒子を残していたのです。木の表面、壁、構造物。あらゆるものに、カビのように細かい粒子が貼り付いていて、そこから匂いが立ち上ってくる、という感覚でした。
電気は通っておらず、液状化が広範囲に進んでいて、船が建物に刺さったまま残っている場所もありました。アスファルトはめくれ、車一台が辛うじて通れる道を、職員の方が「気をつけて来てください」と案内してくれる。そういう状況のなかで、下水処理場の入口に着きました。下水処理場は、その街全体の匂いを、さらに何倍にも凝縮したような場所でした。

街から汚水は流れ続けてくる
津波が引いたあとも、街では人が暮らしていました。最低限の生活が再開すれば、トイレ・風呂・台所からの汚水は出ます。そして、下水処理場は街より低い位置にあるので、汚水は高低差で流れ込み続けます。
問題は、処理場側がそれを受け切れない状態にあったことでした。地下構造物は津波で水没し、ほぼ全滅。地上の処理設備も大半が壊れて動きません。それでも汚水は止められない。
汚水の貯留水位が上がってしまうと、街から重力で流れてくる汚水のルート自体が止まってしまいます。そうなると、街の側で汚水が溢れる。この負のループを止めることが、当社が入って最初に取り組んだ仕事でした。
ハイエース車中泊、海水で体を洗う日々

被災直後の現場では、宿泊できる場所も限られていました。最初の頃は、ハイエースを現地に持ち込んで車中泊をしながら作業を続けていました。
入浴できるところもないので、海水で体を洗って、最後にペットボトルの水で軽くすすぐ、というやり方で過ごした日もあります。地元の道の駅では、有志の方が炊き出しでおにぎりを出してくれていて、海産物の入ったおにぎりが本当にありがたかったことを覚えています。被災地で活動する側にも、地元の方からの「食べ物」は、想像以上に支えになりました。
「動かし続ける」ということ
当社の役割は、汚泥処理側でした。既設水処理設備の汚泥濃縮槽にポンプを設置し、直接ポンプで汚泥を引き抜いて、当社のデカンタ型遠心分離機で固液分離する。フィルタープレスでは処理が難しい高濃度汚泥でも、デカンタ型遠心分離機なら対応できます。
被災地で本当に求められたのは、「新しい設備を組む技術」ではありませんでした。むしろ、被災して傷んだ施設のなかで、「動かし続ける」ためのオペレーションそのものだった、と感じています。汚水は止められない。汚泥は外に出せない。電気も限られ、宿もない。そうした条件で2年間、現場を回し続けるには、機械の性能以上に、現場の判断とオペレーションの粘り強さが必要でした。
仮設水処理という仕事の本質を考えるとき、この現場のことは、当社の中で繰り返し語られてきました。

津波被災後の高濃度汚泥を、連続式デカンタ2台で減容化する
津波で浸水した既設浄化センターでは、既設脱水機が故障し、フィルタープレスでは高濃度汚泥の処理が難しい状況でした。そこで、連続処理に強いデカンタ型遠心分離機を2台体制で設置し、汚泥の減容化を進めました。
処理対象と装置構成
処理対象
- ● 津波で浸水した既設浄化センターの汚泥
- ● 既設脱水機は被災により故障
- ● 汚泥量:18,000㎥/汚泥濃度 約2.7%
- ● フィルタープレスでは処理困難な高濃度汚泥
採用した装置構成
- ● 既設汚泥濃縮槽に設置した汲み上げポンプ
- ● デカンタ型遠心分離機 HS-600MW + HS-550MWの2台体制
- ● 処理水は既設水処理設備へ戻し
- ● 脱水ケーキは場内で取り扱いやすいサイズに調整
処理フロー
既設汚泥濃縮槽からポンプで汚泥を汲み上げ、2台のデカンタ型遠心分離機で連続的に固液分離します。
処理規模・実績
設計上のポイント
- 1 既設脱水機が故障し、フィルタープレスでは津波由来の高濃度汚泥の処理が難しい状況だった。連続式のデカンタ型遠心分離機を選択することで、高濃度汚泥にも対応できた。
- 2 街から重力で汚水が流入し続ける構造の処理場では、汚泥側の減容化が水処理側の機能維持に直結する。水位を下げ続けることが、現場運用上の重要な目的になる。
- 3 被災地ではロジスティックが細くなる。脱水ケーキを場内で扱えるサイズに整え、運び出しが本格化するまでの場内保管を前提に運用設計を組む。
- 4 復旧フェーズは年単位で長期化するため、機器は数ヶ月ごとに点検・部品交換できる体制で常駐させる。
事例47|震災で故障した浄化センターの代替機として活用!津波で浸水した汚泥も処理!


