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5つの下水道現場で鍛えられた、仮設水処理の現場ノウハウ

下水道展2026 特別連載 想定通りには進まなかった現場の記録
下水道展2026 特別連載

想定通りには進まなかった現場の記録

下水道のインフラを支える仕事は、計画通りにいかない場面の連続です。

老朽化した設備が突然止まる。災害で施設が水没する。長く使われていなかった既設の槽を開けてみたら、中身が想定とまったく違う状態だった。下水道事業を運営される側、設計・建設に携わる側のどなたも、一度や二度は出会ったことのある場面ではないでしょうか。

当社(セイスイ工業)は、そうした「想定通りには進まなかった現場」に、24年ほど立ち会ってきました。最初から「仮設水処理」という事業として動いていたわけではありません。デカンタ型遠心分離機を貸し出すレンタル業として始まり、お客さまの現場で起きていたトラブルの一つひとつに、手探りで応じていくなかで、いまの形になってきた、というのが実際のところです。

本連載では、その積み重ねのなかから、特に印象に残っている5つの現場を、時系列で振り返ってみたいと思います。「うまくいった話」というよりも、「うまくいかなかったけれど、なんとかやり切った話」のほうが多いかもしれません。それでも、いまの仕事につながる経験として、折に触れて思い出す現場ばかりです。

各回の末尾には「処理の組み立て(参考)」として、その現場で採用した装置構成、処理フロー、処理規模、設計上のポイントをまとめてあります。お困りごとの参考として、技術側の方にも目を通していただけたら幸いです。

下水道展2026で当社のブースを訪ねていただいた方への、補足としてもお読みいただけたらと思います。

下水道展2026 特別連載

5つの現場でたどる、セイスイ工業の仮設水処理の歩み

第1回:「素人の仕事だった」と振り返る現場 — 福島県の下水処理場(2002年頃)

最初に取り上げるのは、20年以上前のある下水処理場の消化槽清掃工事です。社員5人ほどの小さな会社で、デカンタ型遠心分離機を貸し出すレンタルが中心だった当社が、初めて「現場に出向いて構成まで考える」仕事に踏み込んだ案件でした。いまから見ると恥ずかしいくらいの試行錯誤の連続でしたが、ここから、当社の事業の方向は徐々に変わっていきました。

初期の現場の様子(イメージ)

「お互いまだ何も分かっていなかった」時代の話

きっかけは、あるプラントメーカーからの依頼でした。福島県内の下水処理場で、消化槽の清掃が必要になっていた、と。処理の全体設計はそのプラントメーカーが行い、当社の役割はレンタル機器の手配と現地設置でした。先方の若い担当者も当社も、いずれも業界の入口に立ったばかりの時期で、いま振り返ると「お互いまだ何も分かっていなかった」というのが正直なところです。

当時、現場に組み立てられた構成は、いまから見ると効率の悪いものでした。消化槽の中身は、人が入って作業できる状態ではありません。ガスが充満するため、立ち入りは危険を伴います。組んだ手順は、バキューム業者さんに消化槽の中に水を入れて中身を薄めていただき、それをバキューム車で吸い出す。吸い出した汚泥を、消化槽から100メートルほど離れた場所に据えた仮設プラントまで、バキューム車のピストン移送で運ぶ。プラント側でデカンタ型遠心分離機を回して減容化する、という流れでした。

いま振り返ると、消化槽から処理プラントまでの工程に明らかな無駄があります。本来であれば、消化槽の中にポンプを直接入れて、配管で処理設備までスラリーを送ってしまえばよかった。ただ、当時はそうした工法自体が広く知られておらず、設計側にも当社の側にも、その発想がありませんでした。

山留めを使うことになったのは、後の話

仮設プラントの組み方にも、いまから振り返ると改善の余地がありました。

当社では当時、仮設タンクや機器を据え付ける土台となる架台を、鉄骨を組んだ山留めではなく、土木の足場で使う単管パイプで組んでいました。構造計算は事前に行っており、耐荷重としては問題のない設計です。ただ、その架台に重量のあるデカンタ型遠心分離機を載せて運転を始めると、架台が振動で揺れる現象が出ました。

安全性に直接の支障があったわけではないものの、運転中の振動が安定しないことや、単管パイプは構成の変更・撤去・組み替えの自由度が低いという扱いにくさもあり、工事の途中で山留めへの組み直しを判断しました。

設計上の数字としては成立していても、実際に動かしてみると別の課題が見えてくる、というのは、こうした現場ではよくあることだと、いまでも感じます。現在の当社では、仮設架台は最初から山留めで組むのが標準です。設営・撤去のスピード、組み替えの柔軟性、振動への余裕、いずれの面でも、結果として理にかなった選び方になったと考えています。

山留め

インバーター調整に失敗し、汚泥500kgを手で掻き出した夜

もう一つ、忘れられない失敗があります。

当時、当社ではデカンタ型遠心分離機の回転制御にインバーターを使い始めたばかりでした。デカンタ型遠心分離機は、外胴ボウルと内蔵スクリューの回転差を調整することで、固液分離のバランスを取ります。この調整がうまく決まらず、本来は脱水ケーキ側に出ていくはずの汚泥が、処理水側の出口(4インチ/約10cm)に押し出されていきました。

汚泥書掻き出し

出口の口径が4インチ(約10cm)ですから、汚泥が押し出され続ければ詰まります。詰まったまま運転を続けるわけにはいかないので、機械を止めて中の汚泥を取り出さなくてはいけません。その夜、機械内部に詰まった汚泥を、最終的に手作業で掻き出すことになりました。あとから振り返ると、500kgほどあったと思います。狭い機械の中で、ひたすら掻き出す作業でした。

いまであればインバーター制御や周辺機器の自動制御の段階で詰まらせないので、起きない種類の話です。それでも、機械の中に手を突っ込んでひと晩を過ごしたあの経験は、当社の現場感覚として、いまも引き継がれているように思います。

24年経って残ったもの

この福島県の現場は、特別大きな案件でも、注目される現場でもありませんでした。それでも、

  • 仮設架台を山留めで組むようになった
  • 機械内に固形分を詰まらせない運転設計を持つようになった
  • 消化槽から処理設備まで、バキューム車を介さずに「直接つなぐ」工法を考えるようになった

という3点は、いずれもこの現場の失敗や不便があったからこそ生まれた、現在の当社の標準仕様の原点になりました。「単品レンタル」から「仮設水処理」へと事業の舵を切ったのは2008年前後のことになりますが、それを決められたのは、この福島県の現場のように、機器の周辺の工夫を重ねてきた地味な積み重ねがあったからだと、いまでも思っています。

処理の組み立て(参考)

消化槽汚泥を、引き抜き・砂分除去・遠心分離で処理する

下記は当社の同種案件(事例59)における処理仕様です。当時の福島県の現場は、これに比べて装置構成も運転制御も粗いものでしたが、現在は同じカテゴリーの工事を以下の構成で標準化しています。

処理対象と装置構成

処理対象

  • 下水処理場・消化槽内に堆積した汚泥
  • 解体・改修工事の前段で引き抜く汚泥
  • 汚泥量:1,500㎥/汚泥濃度 約5%
  • し渣は比較的少なめ/砂分混入あり

採用した装置構成

  • バキューム処理:消化槽から汚泥を引き抜き
  • 砂分除去機(サイクロン付振動ふるい機):
    75μm以上の砂分を1次処理で除去
  • デカンタ型遠心分離機 HS-600MW:1時間あたり12㎥で固液分離

処理フロー

消化槽から引き抜いた汚泥を、砂分除去機で前処理し、デカンタ型遠心分離機で脱水ケーキと処理水に分けます。

  • 消化槽
  • バキューム
  • 砂分除去機
  • デカンタ型遠心分離機
  • 脱水ケーキ/処理水
消化槽汚泥処理におけるバキューム、砂分除去機、デカンタ型遠心分離機の処理フロー図

処理規模・実績

処理期間 約1.5ヶ月 連続稼働
減容化 1,500→250 約1/6まで減容化
脱水ケーキ含水率 約84% 処理後の含水率
処理費用 約1/2 バキューム外部搬出との比較

設計上のポイント

  1. し渣が少ない現場であれば、トロンメル系・下水処理場用のし渣除去機ではなく、砂分除去機での前処理が有効。
  2. デカンタ型のインバーター制御は最初の数日が肝。原水濃度・し渣量の変動に応じて差速・送液量を微調整する。
  3. 仮設架台は最初から山留めで組み、振動・偏荷重に余裕を持たせる。

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