もう臭わない・汚さない!アンモニア除去で実現する水質改善と環境対応技術
工場の排水や畜産現場、建設現場などで発生する「ツンとした刺激臭」。その主な原因はアンモニアです。
アンモニアは、悪臭の原因となるだけでなく、河川や海に排出されると水質汚染(富栄養化)を引き起こし、生態系に深刻なダメージを与えてしまいます。そのため、排水基準(アンモニア性窒素)は法規制によって厳しく管理されています。
「臭いをなんとかしたい」「排水基準をクリアしたい」「環境対応(CSR)を強化したい」
こうした課題を解決する鍵が、「アンモニア除去」の技術です。
本記事では、なぜアンモニアが問題視されるのか、そして現場でアンモニアを除去する具体的な方法、技術選定のポイントまでを分かりやすく解説します。
👉 この記事でわかること
- アンモニアが引き起こす「悪臭・環境汚染・法的リスク」の正体
- 現場で実践できる、代表的な4つのアンモニア除去技術と選び方
- 建設・工場・畜産など、用途別に最適化できる仮設アンモニア対策ソリューション
目次
なぜ「アンモニア」が問題? 放置する3つのリスク
排水に含まれるアンモニアは、単なる「汚れ」の一つではなく、放置することで経営や環境に直結する重大なリスクを引き起こします。「そのうち対策しよう」と考えているうちに、取り返しのつかない事態を招く可能性もあるのです。
ここでは、アンモニアを除去せずに放置した場合の、代表的な3つのリスクを解説します。
リスク①:強烈な「悪臭」による環境悪化

アンモニアが引き起こす最も直接的な問題が、あの「ツンとした刺激臭」です。 この強烈な臭気は、まず現場の作業環境を著しく悪化させます。従業員のモチベーション低下や健康被害につながるだけでなく、悪臭は風に乗って拡散するため、近隣住民からのクレームや行政への通報といった深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。
リスク②:水質汚染と生態系への影響

アンモニアは、公共用水域(河川や海)に排出されると、水質汚染の大きな原因となります。 アンモニアに含まれる窒素分は、プランクトンの栄養源(富栄養化)となり、赤潮やアオコの異常発生を招きます。異常発生したプランクトンが死滅・分解される際に水中の酸素が大量に消費され、他の水生生物が窒息死するなど、生態系全体に深刻なダメージを与えます。 また、アンモニア自体が持つ「魚毒性」も問題です。特定の濃度を超えると、魚のエラ呼吸を阻害し、直接的に死に至らしめる危険性があります。
リスク③:「排水基準」違反による法的・社会的ペナルティ

アンモニアは、その環境への影響の大きさから、水質汚濁防止法によって厳しく規制されています。 「アンモニア性窒素」として排水基準値が定められており、これを超過した排水を放流することは法律違反です。違反が発覚すれば、罰則(罰金や懲役)の対象となるだけでなく、行政からの改善命令や操業停止命令を受ける可能性もあります。 何よりも、「規制を守れない企業」というレッテルは、企業の社会的信用(CSR)を大きく失墜させ、取引先との関係悪化やブランドイメージ低下に直結する、重大な経営リスクとなります。
「アンモニア除去」で得られる導入メリット
アンモニアがもたらす3つのリスクは、裏を返せば、除去技術を導入することで得られる大きな「メリット」でもあります。
目の前の課題を解決するだけでなく、環境対応技術への投資は、持続的な企業運営において将来的な利益をもたらします。
メリット①:作業環境と周辺環境の劇的な改善
アンモニア除去によって得られる最も直接的で分かりやすい効果が「悪臭の解消」です。
あのツンとした刺激臭がなくなることで、現場の作業環境は劇的に改善します。これは従業員の健康維持や安全衛生、日々の作業効率の向上に直結します。
さらに、これまで頭を悩ませていた近隣住民からの臭気クレームや、それに対応するための管理コストからも解放され、地域社会と良好な関係を築くことが可能になります。
メリット②:排水基準の遵守とコスト削減
アンモニア除去設備を導入し、排水基準(アンモニア性窒素)を確実にクリアすることは、法令遵守(コンプライアンス)の徹底につながります。これにより、操業停止命令や罰則といった重大な経営リスクを根本から回避できます。
加えて、経済的なメリットも非常に大きなポイントです。排水の浄化レベルが上がることで、下水道放流料の超過料金(ペナルティ)が削減されます。また、これまで高額な処理費用を払って外部の産廃業者に委託していた高濃度排水処理を内製化できれば、排水処理コストそのものを大幅に削減することも期待できます。
メリット③:企業の環境(CSR)・ESG評価の向上
水質汚染対策に積極的に取り組む姿勢は、企業の社会的な信頼性を大きく高めます。
近年、投資家や金融機関、取引先は、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)への取り組み(ESG)を厳しく評価しています。アンモニアという環境負荷の高い物質を適切に処理・管理している事実は、企業のCSR活動として、またESG評価の向上として、対外的に強力なアピールポイントとなります。
【徹底比較】アンモニア除去の代表的な4つの処理技術
アンモニアを除去する方法は一つではありません。排水の濃度、量、設置スペース、コストなどに応じて、最適な技術を選ぶ必要があります。
①生物処理法(硝化・脱窒法)
微生物の力でアンモニアを窒素ガスに分解する最も一般的な方法(活性汚泥槽など)です。
- メリット
薬剤をあまり使わないため、ランニングコスト(運転費用)が比較的安価。 - デメリット (従来法)
微生物の培養に広い槽(設置面積)と時間が必要。また、微生物はデリケートなため、水温や水質の急な変化に弱い。 - 進化型技術 (Habuki)
セイスイ工業でも採用する東芝製『Habuki』は、こうした従来法の課題を解決。回転繊維体を用いることで、省スペースかつ短期間で高濃度の微生物を培養。これにより、BODの大幅除去と全窒素(T-N)の約20%削減を同時に実現。
②物理化学的処理法(凝集沈殿・pH調整・アンモニアストリッピング)
薬剤の化学反応や物理作用を利用する方法(pH調整、凝集沈殿法など)です。アンモニア除去では、主にpHをアルカリ性にしてガスとして追い出す「アンモニアストリッピング法」が用いられます。
- メリット
高濃度のアンモニア排水に強く、比較的短時間で処理が可能。 - デメリット
pHを調整するための薬剤コストがかかる。排ガスの処理が別途必要になる場合がある。
③吸着法(イオン交換法)
ゼオライトなどの吸着剤(吸着塔)を使い、アンモニアイオンを吸着させて除去します。
- メリット
高い除去性能が期待でき、水質の変動にも比較的強い。 - デメリット
吸着剤の定期的な交換・再生にコストと手間がかかる。

④膜処理法(RO膜など)

RO膜(逆浸透膜)などの微細なフィルターで、アンモニアイオンを物理的に分離します。
- メリット
除去率が極めて高く、非常にきれいな処理水が得られる。 - デメリット
導入コストが高額で、定期的な膜メンテナンスが必須。
自社に最適な方法は? 現場別・アンモニア除去技術の選び方
4つの技術を紹介しましたが、「結局、自社にはどれが合うのか?」が一番の疑問点かと思います。 ここでは、現場の具体的なケース別に、最適な技術選定の考え方をご紹介します。
ケース①工場・製造業(排水が安定的・長期的)

- 現場の課題
食品工場や化学工場など、毎日一定量の排水が出続ける。ランニングコストを抑え、敷地内で安定的に処理し続けたい。 - 推奨する選び方
「生物処理法」を基本とします。 広い設置面積は必要ですが、一度軌道に乗ればランニングコストを最も安く抑えられます。ただし、急に高濃度のアンモニア排水が混入する可能性がある場合は、前処理として「ストリッピング法」を組み合わせ、微生物が死なないよう保護するプラント設計が有効です。
ケース②建設・土木現場(排水が一時的・短期間)

- 現場の課題
トンネル工事の湧水や、短期間の造成工事で、数ヶ月だけアンモニア排水が発生。恒久的な設備は置けず、省スペースで即時対応したい。 - 推奨する選び方
「物理化学的処理法」や「吸着法」が最適です。これらの技術は装置がコンパクトで、処理スピードも速いのが特徴です。短期的な課題解決に最も向いています。
ケース③畜産・し尿処理場(高濃度・悪臭が深刻)

- 現場の課題
排水のアンモニア濃度が極めて高く、周辺への悪臭が深刻。とにかく臭いを早急に止めたい。 - 推奨する選び方
基本は「生物処理法(硝化・脱窒)」で大元の処理を行います。ただし、生物処理は臭いが消えるまでに時間がかかります。そこで、近隣からクレームが来ているなど緊急の臭気対策が必要な場合は、即効性のある「ストリッピング法」を導入し、まず悪臭の原因となるアンモニアをガスとして強制的に除去する対策が有効です。
【解決策】あらゆる現場に対応するセイスイ工業の「仮設」ソリューション
上記で挙げた①〜③の多様なケースに対し、セイスイ工業は「仮設水処理プラント」という非常に柔軟な選択肢を提供しています。
もちろん、ケース②(建設・土木現場)のような短期決戦の現場は、仮設プラントが最も得意とする分野です。
しかし、ケース①(工場・製造業)であっても、既存設備の突発的なトラブル対応やメンテナンス期間中の代替として仮設プラントが活躍します。
また、ケース③(高濃度・悪臭)の現場でも、恒久設備が完成するまでの「緊急の臭気対策」をしながら、仮設で迅速に処理することが可能です。
生物処理、物理化学処理、吸着法など、必要な技術をユニットとして組み合わせ、現場の水質と必要な期間に合わせて最適化できること。それがセイスイ工業の最大の強みです。
まとめ:最適なアンモニア対策は「現場診断」から
アンモニアが引き起こす「悪臭」「環境汚染」「法的リスク」は、重大な経営課題です。対策を講じれば、「環境改善」「コスト削減」「ESG評価向上」といったメリットに繋がります。
対策には生物処理(『Habuki』等)、ストリッピング、吸着法など多様な技術がありますが、成功の鍵は「現場に最適な技術を選ぶこと」に尽きます。
セイスイ工業は、必要な技術をユニットで組み合わせる「仮設水処理プラント」で、短期の建設現場から工場の緊急トラブル、高濃度排水まで、あらゆる現場に最適な解決策を迅速に提供します。アンモニア対策は、まず専門家への相談から始めましょう。
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Habuki™は、東芝が開発した回転繊維体を用いたコンパクトなOD法向けの水処理装置です。低コスト・省スペースで様々なケースに対応いたします。各種工場・製鉄所・発電所向けのご提案書です。
Habuki™は、東芝が開発した回転繊維体を用いたコンパクトなOD法向けの水処理装置です。低コスト・省スペースで様々なケースに対応いたします。OD法下水処理場向けのご提案書です。
セイスイ工業は、「排水や汚泥処理」の計画立案から処理プラント設置、水処理機材レンタルまでトータルでサポート。 本カタログではレンタル用水処理機材の紹介や、実際の事例を写真や図でわかりやすくご紹介しています。ぜひご覧ください。
セイスイ工業は、土木現場で発生した「建築汚泥処理」の計画立案から処理プラント設置、水処理機材レンタルまでトータルでサポート。 本カタログでは施工例の紹介や、実際の事例などを写真や図でわかりやすくご紹介しています。ぜひご覧ください。







