PFAS除去に使える処理装置とは?現場対応に強いメーカー・対策技術まとめ

近年注目されているPFAS(有機フッ素化合物)は、「永遠の化学物質」とも呼ばれ、分解されにくく土壌や地下水に残留します。消防訓練場や工場跡地などで全国的に汚染が確認され、早急な対策が求められています。
しかし、PFASは非常に安定した物質のため、一般的な水処理では除去が困難です。この記事では、現場で使えるPFAS処理装置の種類や仕組み、導入事例、対応力の高いメーカーの特徴までを、わかりやすく紹介します。
目次
なぜPFASは除去が難しいのか?
PFASが除去しにくいのは、「炭素–フッ素(C–F)結合」が非常に強く、自然にはほとんど分解されないためです。微生物処理や薬剤では効果がなく、水に溶けやすい性質も、処理を難しくしています。従来の水処理では効果が薄く、ごく微量でも健康や環境への影響があるため、活性炭・膜などの高度処理による技術が重要です。
PFAS除去に使われる主な処理技術
PFASの除去には、従来の排水処理では不十分であるため、専用の技術が求められます。現在、実用化されている代表的な手法には以下のようなものがあります。
- 活性炭吸着(GAC・PAC)
PFASを吸着して除去する技術、GAC(粒状活性炭)は安定運用、PAC(粉末活性炭)は応急対応 - 膜処理(ナノろ過・RO)
分子サイズで選択的に除去、除去効率は高いが濃縮液の処理が必要 - イオン交換樹脂
PFASに特化した吸着材、種類によっては除去効率が高いが交換頻度やコスト面が課題 - 熱分解・酸化分解
PFASを分解・無害化する手法
それぞれの技術には得意分野と課題があり、対象の水質や現場条件に応じた組み合わせが重要です。
現場対応に強い処理装置の特徴とは?
工事現場や災害対応など、突発的なPFAS汚染には、即応性と柔軟性を備えた処理装置が欠かせません。特に、恒久施設の設置が難しい現場では、短期間で稼働できる仮設型や可搬型装置が有効です。装置選定の際は、即応性だけでなく、除去性能・管理のしやすさ・コストバランスを意識することが大切です。
可搬型・仮設型の有効性
- 限られたスペースや短期利用に対応しやすく、機動力がある
- 活性炭やイオン交換樹脂を用いた小型モジュール型装置が主流
- 設置・撤去が容易で、現場負担やコストを軽減

初動対応で重要なポイント

- 立ち上げの速さが拡散リスクの抑制に直結
- 種類や濃度に左右されない処理性能(分級力)が必要
- ろ材などの交換が容易なモジュール設計が運用性向上につながる
維持管理とコストのバランス
- フィルター類の交換時期管理を誤るとコスト増につながる
- 長期利用には補充体制や管理負担の確認が不可欠
- 将来の規制強化も見据えた、維持費込みでの設計判断が重要

PFAS処理装置メーカー・導入事例紹介
PFAS除去への関心が高まる中、実績あるメーカーの技術にも注目が集まっています。ここでは、活性炭吸着や家庭用機器、仮設対応など、それぞれの強みを持つ企業の取り組みをご紹介します。
Calgon Carbon Corporation|活性炭吸着分野
Calgon Carbon Corporationは、GAC(粒状活性炭)を用いたPFAS除去技術で有名なメーカーです。米国を中心に水道施設・産業排水処理で豊富な導入実績があり、PFOS・PFOAを高効率で吸着・除去できる製品を展開。交換サイクルやろ過速度に応じた最適設計も提案されており、自治体の飲料水基準対策などにも採用されています。
栗田工業|家庭用から装置部材まで幅広くPFAS対策
栗田工業グループは、PFAS除去に対応した家庭用・業務用浄水器を展開。PFOS・PFOAを約80%以上除去できる製品を展開しています。また、PFASを含まない部材(PFASフリー)の実用化にも注力。旭有機材と共同でPFASフリーのバルブ部品を開発し、水処理装置への搭載に向けた実証を進めており、家庭と産業の両面でPFAS対策を推進しています。
セイスイ工業|仮設型の柔軟な対応力
セイスイ工業は、可搬型・仮設型の水処理プラントを用いた汚染土壌の洗浄や分級処理の実績をもとに、PFAS含有排水へ応用可能なプラントを展開しています。現場に合わせてカスタム可能で、迅速対応・柔軟設計という特長をPFAS対策に活かすことができます。
PFAS除去装置を選ぶ際のポイントと注意点
PFAS除去には活性炭・膜・イオン交換樹脂などさまざまな装置や技術がありますが、排水の性質や目的に応じて最適な選定が欠かせません。以下のポイントを押さえて導入を検討しましょう。
主な検討ポイント
- 排水の性状を把握する
PFASの種類(例:PFOS、PFOA)、濃度、水量、運用期間などの基本情報を確認 - 処理方式と装置構成を検討する
単体装置か、前処理・後処理を含むシステム対応かを選定。将来の規制強化への対応力も重要 - 除去性能と運用性を確認する
除去率、対応PFASの種類、他の不純物への耐性、ろ材・膜・樹脂の交換周期や再生方法などを比較

- 廃棄物処理とコストを考慮する
処理後に発生する吸着材や濃縮液の処分方法(特別管理産廃の可能性)と、処理業者の体制・ランニングコストも要確認
装置導入は「現場の水質に合うこと」が前提ですが、将来的な規制・残渣処理・運用コストまで考慮したトータル設計が重要です。
まとめ|現場に適したPFAS除去装置をどう選ぶ?
PFASは分解されにくく、健康や環境への影響が懸念されていることから、確実な除去と早急な対応が求められています。しかし、その処理には専門的な技術と装置が必要であり、現場の状況に応じた適切な選定が不可欠です。
本記事では、PFAS除去に有効な代表的技術から、可搬型・仮設型装置の活用ポイント、さらに対応力に優れたメーカーまでを紹介しました。処理効率・コスト・メンテナンス性のバランスを踏まえ、今後の規制強化も見据えた導入が重要です。現場に即した最適な対策で、安全な水環境の維持を図りましょう。