ピンクモスクとプトラジャヤ湖。マレーシアで見つけた水を守る工夫
みなさん、マレーシアにある「ピンクモスク」をご存じですか?
その名前のとおり、建物全体がきれいなピンク色をした、とても美しいモスクです。正式名称は「プトラモスク」。マレーシアの行政都市プトラジャヤにあり、人気の観光スポットとして知られています。


そして、ピンクモスクのもうひとつの見どころが、目の前に広がる大きな湖。水処理の仕事をしていると、こうした水辺の景色もつい気になってしまいます。
「これだけ大きな湖の水って、どうやってきれいに保っているんだろう?」
気になって調べてみると、実はこの湖、人の手によって造られた「人工湖」でした。しかも、街づくりの段階から水質を守る仕組みが考えられていたそうです。
今回は、そんなピンクモスクの美しい景色を支える、マレーシアの水環境への取り組みをご紹介します。
ピンクモスクと湖は、最初からセットで計画されていた?
実は、ピンクモスクと目の前の湖は、街づくりの段階から一緒に計画されていたんです。ピンクモスクの建設が始まったのは1997年。その翌年の1998年には、湖や人工湿地の建設も始まりました。そして1999年にピンクモスクが完成し、2002年には湖全体が完成しました。
つまり、もともとあった湖のそばにモスクを建てたのではなく、街を造るときから、水辺の景色も一緒に考えられていたということなんです。ピンク色のモスクが湖に浮かんでいるように見える美しい景色も、実は計画的に造られたもの。しかも、湖の水をきれいに保つための工夫まで、街づくりに組み込まれていました。
湖の水をきれいにするのは、なんと植物!
ピンクモスクの目の前に広がる「プトラジャヤ湖」。その広さは約400ヘクタール。なんと、東京ドーム約85個分にもなる大きな湖です。これだけ大きな湖の水を、どうやってきれいに保っているのでしょうか?
その秘密は、湖の北側に整備された「人工湿地(じんこうしっち)」にあります。湿地とは、水が浅くたまっていたり、地面がいつも湿っていたりする場所のこと。プトラジャヤでは、そんな湿地を人工的に造り、植物や小さな生き物の力を借りて水をきれいにしています。
人工湿地の広さは約197ヘクタール。24の区画に分かれていて、周辺の川から流れ込む水を、湖に入る前に段階的に浄化する仕組みになっています。


では、実際にどのように水をきれいにしているのでしょうか?
主に3つの働きがあります。
① 水の流れをゆっくりにして、泥や汚れを沈める
雨が降ると、川には土砂やさまざまな汚れが流れ込んできます。
人工湿地では、水の流れをゆるやかにすることで、水に混ざった細かな泥や砂を底に沈めます。さらに、こうした土砂に付着した汚れを取り除く効果もあるとのこと。
プトラジャヤの人工湿地では、水深の異なる場所が設けられており、水をゆっくり流しながら汚れを取り除く工夫がされているそうです。
② 水生植物が汚れを捕まえ、栄養分を吸収する
人工湿地には、ヨシなどの水辺に育つ植物が植えられています。
こうした植物は、水の流れを抑えて細かな汚れを捕まえるだけでなく、水に含まれる窒素やリンなどの栄養分を吸収する働きもあるのだそう。窒素やリンは植物の成長に必要な栄養分ですが、水の中に多すぎると藻が大量に増える原因になることも。
植物の働きを利用することで、湖に流れ込む栄養分を減らし、水質の悪化を防いでいます。
③ 目に見えない微生物が、水の汚れを分解する
そして、もうひとつ重要なのが微生物の働きです。
水生植物の根や茎の周りには、たくさんの微生物がすみついています。微生物は、水に含まれる有機物などを分解したり、窒素の形を変えたりする働きを持っています。つまり、植物そのものだけでなく、植物の周りにすむ微生物も、水をきれいにする重要な役割を担っているんです。
この仕組みは、私たちが普段扱っている排水処理にも通じるものがあります。
さらにプトラジャヤでは、水深や植物の種類が異なる区画を組み合わせ、水の流れや水位も調整できる構造になっています。
人工湿地には、大雨のときに水を一時的にためる役割や、魚や鳥などの生き物が暮らす場所をつくる役割もあるそうです。ただ植物を植えるだけでなく、水の流れや植物、微生物の働きを組み合わせているところが面白いですね。
マレーシア各地で進む、水環境を守る取り組み
実は、こうした自然の力を利用する水処理は、プトラジャヤだけのものではありません。マレーシアでは、雨水を管理するための国のマニュアルにも、人工湿地を活用する方法が紹介されています。
また、クアラルンプール近郊の森林研究所(FRIM)にある池でも、人工湿地を使って水質を改善する施設が整備されています。もちろん、すべての湖に人工湿地があるわけではありません。それでも、自然の力を活かして水をきれいにしようという取り組みが、ほかの場所でも行われているんですね。
ところが今回、マレーシアの空にはちょっとした異変が…
今回マレーシアを訪れて、もうひとつ気になったことがありました。それは、街全体がなんだか白っぽく霞んでいること。遠くの建物も、ぼんやりして見えます。
実は今、マレーシアでは「ヘイズ」と呼ばれる大気汚染が深刻化しています。その大きな原因となっているのが、隣国インドネシアで発生している森林火災です。2026年は、インドネシアのスマトラ島やカリマンタン島などで森林や泥炭地の火災が広がっています。
泥炭地とは、枯れた植物などが長い時間をかけて積み重なった土地のこと。乾燥すると火がつきやすく、地面の中で火がくすぶり続けることもあります。

こうした火災で発生した大量の煙が、風に乗って国境を越え、マレーシアやシンガポールなどにも広がっているんです。
2026年10月20日には、マレーシア国内30地域で大気汚染指数(API)が「不健康」の水準となり、プトラジャヤでも162を記録しました。
ヘイズは景色を霞ませるだけでなく、目や喉への刺激、呼吸器への影響など、健康面でも心配される問題です。ピンクモスクを囲む湖では、水質を守るための仕組みが街づくりに取り入れられていました。一方で、ヘイズのように、国境を越えて広がる環境問題もあります。
美しい景色を眺めるだけでは気づかない、さまざまな環境の課題があることを感じました。
ピンクモスクを訪れて、水と空気、身近な環境について考える
ピンクモスクの美しい湖と、今回マレーシアで見られたヘイズ。
水と空気、問題はそれぞれ違いますが、どちらも私たちの暮らしに大きく関わっています。
今回ご紹介したプトラジャヤ湖のように、自然の力を活かした水処理の仕組みがあることを知ると、普段見ている景色もちょっと違って見えてきますね。
私たちセイスイ工業も、水処理の専門会社として、さまざまな現場の水の問題に向き合っています。これからも、身近な景色や出来事をきっかけに、水や環境について考える話題をお届けできればと思います!

バトゥ洞窟①

バトゥ洞窟②

ムルデカ広場

ツインタワー


