二酸化炭素(CO₂)の基準値とは?作業環境・密閉空間でのリスクと対策
「二酸化炭素(CO₂)の基準値はどれくらいか」「密閉空間では何が危険なのか」
排水処理・下水道・発酵設備などを扱う現場では、硫化水素やpH管理と同じく、CO₂の管理が欠かせません。
CO₂基準には室内換気の目安となる1,000ppm(建築物衛生法)と、作業環境で健康障害を防ぐための5,000ppm(労働安全衛生法)の2つがあります。現場では、この5,000ppmを超えないことが最重要です。
CO₂は無色無臭で気づきにくく、基準を超えると二酸化炭素中毒のリスクが急増します。密閉空間で事故が多いのはこのためです。
本記事では、CO₂の性質・基準値・測定・リスクを、現場で使える形でわかりやすく整理します。安全管理に関わる方はぜひ確認してください。
👉 この記事でわかること
- CO₂基準値(5,000ppm)の意味と、濃度ごとの健康影響・危険性
- 密閉空間でCO₂が急上昇する理由と、実際に起きやすい事故のメカニズム
- 安全管理に必要な測定方法・センサー選び・換気によるリスク低減策
二酸化炭素(CO₂)とは何かー基準値が重視される理由
CO₂は日常的に存在するガスですが、基準値を超えると作業環境の安全性を大きく脅かすという特徴があります。特に密閉空間では短時間で濃度が上昇し、気づかないまま危険域に入るケースが多く、労働安全上の重要項目です。
CO₂の基本性質と見えないリスク
CO₂は 無色・無臭・無刺激のガスで、人が感覚ではほぼ察知できません。毒性自体は硫化水素のように強くはないものの、高濃度では二酸化炭素中毒を誘発し、次のような影響が人体に現れます。
- 軽度:頭痛・めまい・判断力低下
- 高濃度:意識障害・転倒事故・最悪の場合は死亡
特に酸素濃度が17%以下になると、正常な判断ができなくなるため、気づかないまま事故につながりやすい点が深刻です。毒性は弱くても、「気づけないまま危険値へ上昇する」ため事故件数が多い、これがCO₂が危険視される最大の理由です。

なぜ作業現場でCO₂が問題になるのか(密閉空間での蓄積)

CO₂は発酵槽・地下ピット・マンホールなどで自然に発生し、空気より重いため低所に溜まりやすい性質があります。呼気だけでも急速に濃度が上がることがあり、作業者が異変を感じる頃にはすでに危険値に近いことも少なくありません。
こうした「蓄積しやすく、気づきにくい」特性が、CO₂基準値が重視される理由です。
作業環境におけるCO₂の基準値(労働安全衛生法・国際基準)
CO₂は毒性が強いガスではありませんが、高濃度では判断力の低下や意識障害につながるため、各国で基準値が厳密に定められています。日本の労働安全衛生法だけでなく、国際機関も明確な指標を示しており、作業環境管理ではこれらを理解しておくことが重要です。
国内基準・国際基準・健康影響の比較
以下は、よく参照されるCO₂濃度の基準値と健康影響をまとめた表です。
濃度 (ppm) | 濃度 (%) | 分類・基準 | 人体への影響・症状(科学的根拠に基づく) | 主な法的・公的基準 |
350 - 450 | 0.04% | 外気レベル | 影響なし。通常の屋外環境。 | |
450 - 1,000 | ~0.1% | 良好な室内環境 | 影響なし。快適。これを超えると空気の淀みを感じ始める。 | ビル管法・事務所則(基準値) |
1,000 - 1,500 | ~0.15% | 換気推奨レベル | 【不快感・認知への影響】 眠気、空気の淀み感。敏感な人は不快感を覚える。 複雑な意思決定能力の低下が始まる可能性。 | 学校環境衛生基準(1,500ppm以下) |
1,500 - 5,000 | ~0.5% | 要注意レベル | 【軽度の代謝影響】 強い眠気、倦怠感、集中力の著しい低下。一部の人で頭痛や心拍数の微増。 ※ただし、直ちに生理的損傷を与えるレベルではない。 | |
5,000 | 0.5% | 労働許容限界 | 【労働衛生上の境界線】 健康な成人が1日8時間労働しても健康障害が出ないとされる限界値。 これを超えると生理的負担が増大する。 | ACGIH TLV-TWA OSHA PEL |
10,000 - 30,000 | 1 - 3% | 危険・警告レベル | 【呼吸刺激の開始】 呼吸が深くなる(呼吸中枢刺激)。動悸、顔面のほてり、軽度の頭痛。 長時間の暴露でアシドーシス(血液の酸性化)のリスク。 | ACGIH STEL (30,000ppm) |
40,000 | 4.0% | 生命の危機 (IDLH) | 【即時退避レベル】 激しい呼吸促迫(あえぎ呼吸)。強い頭痛、めまい、混乱、視覚障害。 生命または健康に不可逆的な影響が出る恐れがある。 | NIOSH IDLH |
70,000 - 100,000 | 7 - 10% | 中毒・麻酔レベル | 【意識障害の発生】 数分以内で意識レベルの低下、失神。震え、痙攣。 放置すれば死に至る。 | |
100,000 | 10% | 致死的 | 急速な意識消失、呼吸停止、死亡。 |
基準値が重要な理由
CO₂は硫化水素のように高い急性毒性はありません。しかし、以下のような特徴があり、作業現場では事故件数が多いガスです。
- 無色無臭で気づきにくい
- 密閉空間で“急激に蓄積”しやすい
- 判断力低下により事故が起きやすい
とくにピット・マンホール・タンク内などは換気効率が悪く、短時間で基準値を超えることがあります。そのため5,000ppmを超えない管理と1,000ppm以下を保つ換気が、現場の安全確保では不可欠となります。
密閉空間で起きやすいCO₂事故の実例とメカニズム
CO₂は毒性こそ強くありませんが、無色無臭で気づけないまま危険濃度に達することが最大のリスクです。ここでは、現場で実際に起きやすい事故のパターンを簡潔にまとめます。
発酵槽・下水道・ピットでの二酸化炭素中毒事故
発酵や微生物分解が進む環境ではCO₂が急増し、酸素が一気に奪われます。密閉空間で作業する際に「二酸化炭素中毒に気づかないまま倒れる」事故が多発しています。
さらに、同じ環境では硫化水素(H₂S)も同時発生しやすく、複合的な危険が重なる点も特徴です。
換気不足による CO₂蓄積(工場・オフィスの潜在リスク)
省エネ運転や密集環境では、CO₂が想像以上に蓄積します。「頭が重い」「集中できない」といった不調が、実はCO₂上昇によるものだった例も少なくありません。
特に以下の状況では、CO₂濃度がすぐに上昇します。
- 閉め切った作業室
- 人が集まる会議室
- 空気が滞留しやすいライン周辺
判断力低下による作業ミス・事故
CO₂が2,000〜3,000ppmに近づくと、急性症状はなくても判断力・注意力が低下します。事故報告でも、作業者が「自覚しないままミスが増える」傾向が共通しています。
これは水処理現場でも同じで、pH調整・薬注管理の判断ミスにつながるケースがあります。CO₂管理は、安全だけでなく運転精度を守るための重要対策と言えます。

CO₂の測定方法とセンサー選び(現場で失敗しない基礎)
CO₂は「方式・精度・設置位置」で測定値が大きく変わります。これは、pH測定器が電極の状態で精度が左右されるのと同じで、測定原理を理解しないまま使うと誤判断につながる点が共通しています。そのため、現場では適切なセンサー選定が不可欠です。
CO₂センサーの方式
CO₂計はNDIR(非分散型赤外線)方式のセンサーを選びましょう。安価な半導体式センサーは、消毒用アルコールや湿気、他のガスにも反応してしまい、正確な値を測定できない、応答の遅れが発生するため、人命に関わる現場での使用には適しません。
測定器選びのポイント
必要な性能は用途で変わります。
- 室内環境:0〜5,000ppm
- 作業環境:1万ppm以上の測定が必要な場合も
- ピット・槽内:急上昇に追従できる“応答速度”が重要
安全管理では警報機能(音・光)、記録管理ではデータロガーが有効です。
設置位置で数値が変わる理由
CO₂は空気より重く、低所ほど高濃度になりやすいため、設置位置で測定値が大きく変わります。つまり、どの位置で測るかが精度の鍵です。
- 換気が弱い部屋→足元・隅に蓄積
- ピット・マンホール→入る前から危険濃度
- 発酵槽周辺→微生物反応で局所上昇

CO₂を安全に管理するための換気・対策のベストプラクティス
CO₂は気づかないまま危険域に達することが多く、換気・測定・記録の3つを押さえるだけで事故リスクは大きく下がります。ここでは、現場で使える要点だけをコンパクトにまとめます。
換気の基本
CO₂は空気より重く、低所に溜まりやすいガスです。そのため、どんな換気をするかで安全性が大きく変わります。排気位置が高すぎる/風量不足など、誤った換気は危険を残すため注意が必要です。
- 自然換気:軽い滞留に有効だが、密閉空間では不十分。
- 強制換気:もっとも実用的。ファンでCO₂層を崩し、短時間で排出。
- 置換換気:下部に溜まったCO₂を押し出す方式。マンホールやピットで有効。

作業前・作業中の濃度管理

密閉空間では、硫化水素対策と同様に「測定→換気→連続監視」が基本です。この流れを守るだけで、閉所事故のリスクは大幅に下がります。
- 事前測定:入口だけでなく、低い位置も測る(CO₂は下部に溜まる)。
- 強制換気:安全濃度まで下げる。下がらない場合は入室禁止。
- 作業中の連続監視:呼気や作業熱でCO₂はすぐ上昇。入気側で測るのが基本。
アラート設定と管理帳票
CO₂は上昇スピードが読みにくいため、警報と記録が欠かせません。排水処理や設備管理と同じく、「数字で管理する」ことが事故を防ぐ最短ルートです。
- 警報値の目安
1,000ppm:建築物衛生法の基準値、換気の目安
3,000ppm:注意
5,000ppm:労働安全衛生法の基準値、退避判断の基準 - 記録の効果
濃度推移を残すことで、換気不足の時間帯、特定作業での上昇パターンが把握でき、改善点が明確になります。

まとめ:CO₂基準値を正しく理解し、密閉空間の事故を確実に防ぐために
二酸化炭素(CO₂)は硫化水素ほど毒性は強くありませんが、気づかないうちに危険濃度へ上昇する点で、現場では大きなリスクになります。特にピット・マンホール・発酵槽などの密閉空間では短時間で濃度が高まり、5,000ppm(労働安全衛生法)を超えると判断力低下や意識障害が急増します。
安全管理の要点は次の3つです。
- 基準値の理解:1,000ppm以下を維持する換気設計
- 正確な測定:NDIR方式センサーで作業前・作業中に濃度を確認
- 換気と記録:強制換気・連続監視・アラート設定で見えない危険を排除
硫化水素やpH管理と同じく、CO₂管理も作業安全の基本です。日々の測定と換気の徹底が、事故を防ぐ最も確実な手段です。
お役立ち資料ダウンロード
Habuki™は下水処理の負担を軽くするための前処理装置です。このカタログではHabuki™の製品についての詳しい説明や、実際の導入事例等をご紹介しております。ぜひご覧ください。
セイスイ工業は、「排水や汚泥処理」の計画立案から処理プラント設置、水処理機材レンタルまでトータルでサポート。 本カタログではレンタル用水処理機材の紹介や、実際の事例を写真や図でわかりやすくご紹介しています。ぜひご覧ください。
下水処理場における既設設備の改修、更新工事や災害による被災で大量発生する汚泥を脱水機(遠心分離機)を用い、短期間で水と固形物に分離する工法です。「消化槽汚泥処理」で廃棄物量を70%削減した事例を収録しました。





