pH測定器の選び方と使い方|種類・仕組み・校正方法・トラブル対策を現場目線で解説
排水処理や設備管理の現場で、最もよく使う計器のひとつが「pH測定器」です。しかし、「数値が安定しない」「校正しても狂う」「電極がすぐダメになる」といったトラブルは、どの現場でも必ず起こります。
実はその多くが、測定器の選び方や使い方を誤ったことで発生しています。
pH測定器(水質測定器・水質計)はどれも同じように見えても、メーター本体の設計や電極の材質、温度補正の方式、ハンディ型・据置型といった構造の違いにより性能が大きく変わります。そのため、安易に価格だけで購入すると誤差やトラブルの原因になります。
前の記事で解説した「pH基準値の重要性」も、正確に測れる測定器があって初めて守れるものです。
つまり、pH測定器の理解は 排水管理の“入り口”であり“土台” です。そこで本記事では、次のポイントを“わかりやすく・実務目線で”整理します。
👉 この記事でわかること
- なぜ pH測定器は選び方を間違えるとトラブルが起きるのか
- 携帯型・据置型・オンラインなど「タイプごとの適性と使い分け」
- 正確に測るための基本操作・校正のコツ・故障を防ぐ管理方法
pH測定器のしくみと基本構造を理解する
pH測定器を正しく使いこなすためには、「何を、どんな仕組みで測っているのか」を理解しておくことが重要です。ここでは、pH計の基本構造と、誤差が出やすいポイントを実務に沿って解説します。
pHは「電位差」で測る仕組み
pH計は、水中の水素イオン濃度そのものではなく、センサー(ガラス電極)が溶液の電位差を検出して数値化します。
pHはもっとも基本的な水質測定項目で、測定対象となる液体の種類によって応答性が変わる場合があります。
構成はシンプルで、ガラス電極・内部液・参照電極の組み合わせで測定します。電位が安定するまで時間がかかるため、数値が落ち着くまで待つ必要があるのが特徴です。
ガラス電極の構造と劣化しやすいポイント
pH測定の中心は「ガラス電極」です。ガラス膜表面で水素イオンが出入りし、その電位差を計測します。
誤差が出やすい主な理由は次の3つです。これらは標準液(pH校正液)を使った水質検査の際にも顕著に表れ、「数値が安定しない」は多くの場合この電極状態が原因です。
- 乾燥→感度が低下
- 汚れ→イオン交換が阻害
- 膜劣化→性能が徐々に低下(寿命は6ヶ月〜1年)

温度補償(ATC)が必要な理由

pHは温度で変化するため、温度補正(ATC)の有無で精度が大きく変わります。近年はデジタル式のpHメーターが一般的で、ATC搭載モデルが主流です。
- ATCあり:温度変化を自動補正し、安定した測定が可能
- ATCなし:温度が変わるだけで誤差が発生
pH測定器の種類と現場での使い分け
携帯型(ハンディ型)ー点検・サンプリング向け
携帯型は、もっとも広く使われる一般的なpH測定器で、日々の「スポット測定」が中心の現場に適したタイプです。
コンパクトかつ防水仕様のモデルが多く、水質検査の現場で扱いやすいため、食品工場や排水施設の巡回点検・サンプリング測定に最適で、必要なときにすぐ測れるのが最大の利点です。
- メリット:軽量・低コスト・取り回しが良い
- デメリット:連続監視には向かず、測定の手間がかかる
据置型ー設備に組み込み連続監視
据置型は、槽や配管に固定設置して使うタイプで、調整槽・反応槽のpHを常時モニタリングできます。pH管理を「運転の一部」として組み込みたい現場に最適です。
制御盤と接続すれば、薬注装置と連動して自動制御も可能。安定性と信頼性が高く、本格運用に向いています。
- メリット:高精度・連続監視・制御連動が可能
- デメリット:初期費用・設置工事が必要
オンライン連続測定ー自動制御を行う現場向け
オンライン測定は、据置型の中でもリアルタイムで制御に反映できるタイプです。
pHが大きく振れやすい調整槽や、原水変動が激しい現場では特に効果的で、フィードバック制御により薬注量を自動調整できるため、安定運転に直結します。変動の早期発見と適正な制御を実現する仕組みです。
低価格機/高精度機の違い(耐薬品性・応答性など)
pH計は価格帯によって性能差が大きく、主に以下が違います。
- 耐薬品性:腐食性の高い排水では、ケミカル対応電極が必須
- 応答性:変動の大きい排水は、速い応答がないと追従できない
- ドリフト(測定値のズレ):安価な機器ほどズレが早い
- メンテ頻度:電極寿命や校正頻度が大きく変わる
安い機器を選ぶと、「すぐ値が狂う」「頻繁に校正が必要」「故障が早い」といった問題が起きやすく、結果的に運用コストが増えることもあります。

失敗しない pH測定器の選び方
測定範囲・精度・分解能の確認
pH測定器を選ぶ際の出発点は、「何を、どの範囲と精度で測るか」を明確にすることです。
まず、水質測定の測定対象(排水・工場排水・薬液など)を把握し、それに対応した測定範囲と精度を持つ機器を選ぶ必要があります。pHメーター本体の性能が不足していると、正確な水質検査ができません。
一般的な排水管理では pH4〜10 を測定できれば多くの現場に対応しますが、酸性・アルカリ性に大きく振れやすい現場では、さらに広いレンジが必要です。
また、pH基準値を守るためには、小数点1桁(0.1)精度は必須で、0.01刻みの分解能があると調整が安定します。精度が足りない測定器では、正しく調整できず基準値逸脱の原因になります。
電極の耐薬品性・寿命・交換コスト
pH測定器で最も重要な部品が電極です。現場の溶液の性質に合わない電極を使うと、すぐに値が狂う/寿命が極端に短いというトラブルが起きやすくなります。
電極選定のポイントは以下の通りです。
- 酸・アルカリに強いか(耐薬品性)
- 油分・スラッジに詰まりにくい構造か
- 特殊用途(耐フッ酸・高温・低導電など)に対応しているか
また、電極寿命は一般に 6ヶ月〜1年。交換サイクルが短い機種ほどランニングコストが高くなるため、初期費用だけで選ばないことが重要です。
設置環境に合うか(温度・汚れ・流量)
据置型・オンライン型を選ぶ場合、現場条件に適合しているかが必須チェックポイントです。
- 高温排水:耐熱電極が必要
- 油分・スラッジが多い:詰まりにくい構造、清掃しやすい電極を選ぶ
- 流量が少ない槽:電極周りが停滞して汚れやすく、誤差が出やすい
設置位置も重要で、撹拌が効いた場所・泡が当たらない位置・流れが安定した場所を選ぶことで測定精度が大きく変わります。
メンテナンス性(洗浄・保存のしやすさ)
pH測定器は「使い方より、手入れ」で性能が決まると言われるほど、メンテ性が重要です。
- 電極の洗浄頻度(汚れが多い現場は頻回に必要)
- 自動洗浄/セルフクリーニング機能の有無
- 適切な保存液が確保できるか(乾燥は電極劣化の原因)
メンテがしにくい機種を選ぶと、「測定値が安定しない→薬注が狂う→トラブル増大」という悪循環に陥りやすいため、現場で扱いやすい構造かどうかを必ず確認します。

正確に測るための使い方と日常管理
測定前の電極チェック(洗浄・気泡・保存状態)
正確なpH測定は、まずセンサー(電極)が正常に働く状態であることが前提です。水質検査で扱う溶液には油分やスラッジが含まれることも多く、電極が影響を受けやすいため、測定前に次の3点をチェックします。
- ガラス膜の汚れ:油分・スラッジ付着は誤差の原因。まず洗浄。
- 内部液の気泡:気泡があると電位が安定しない。軽く振って除去。
- 乾燥した電極:感度が落ち、値が安定しにくい。保存状態を必ず確認。

安定した測定を行うための基本手順

pH測定は、操作自体はシンプルですが、値が安定するまでの扱い方が重要です。
- サンプルに一度浸して馴染ませる:応答が早くなる。
- 値が落ち着いてから読む:瞬間値ではなく“安定値”が正しい。
- 強い攪拌はNG:気泡や衝撃で誤差の原因に。
使用後の電極管理と保存方法
電極管理が悪いと、どんな測定器でも正確に測れません。
- 保管液に必ず浸けて保存:乾燥は大きな劣化要因。
- 汚れに応じて洗浄液を使い分ける:水洗いだけでは不十分なことも多い。
- 保存状態の悪さ=誤差の最大原因:pH測定トラブルのほとんどは電極管理に起因。

精度を保つ校正・メンテナンスとトラブル対処
1点・2点校正の使い分け(pH4・7・10)
pH測定器の精度を決めるのは、本体性能より校正の質です。標準液(校正液)による定期校正は必須で、最近は自動校正付きデジタルpHメーターも普及し、誤差を大幅に低減できます。
排水のように酸性〜アルカリ性まで変動する現場では2点校正(pH7+pH4or10)が基本。電極スロープが補正され、実測レンジでも安定した値が出せます。
校正液は開封後に劣化しやすく、電極を入れっぱなしにすると汚染して使えなくなるため、必要量だけ取り分けて使うのが鉄則です。
校正頻度の目安
- 据置型:目安:月1〜週1
- ハンディ型:目安:週に数回
電極寿命を延ばす清掃・保守のコツ
ガラス電極は繊細で、汚れ・乾燥・劣化 が性能低下の主因です。汚れ別に洗浄方法を変えると効果的です。
- 油分 → 中性洗剤
- 無機スケール → 希酸
- タンパク汚れ → 酵素系洗浄液
また、電極には内部液補充型とカートリッジ交換型があり、寿命は一般に 6ヶ月〜1年。応答が遅い、校正が合わない、値が揺れる、等の症状が続く場合は交換時期です。
よくある誤差・故障(値が安定しない/校正できない)
多くのトラブルは電極破損ではなく、小さな不具合が原因です。
- 値が安定しない例
内部液に気泡、ガラス膜の汚れ、据置型で流量不足→先端だけ汚れる - 校正できない例
電極劣化、校正液の劣化、スロープが極端に出ない
また、測定値の安定まで異常に時間がかかる場合は、電極寿命が尽きかけているサインと判断できます。

まとめ:pH測定器を使いこなせることが安定運転の最短ルート
pH測定器は、排水処理・設備管理における最も基本的で、最も重要な水質計です。しかし、正しい選定・適切な使い方・定期校正がそろっていなければ、どれほど高性能な機器でも正しい値は得られません。
この記事で整理したように、
- 現場に合ったタイプ(携帯型・据置型・オンライン)の選定
- 電極の適正選択とメンテナンス
- 標準液を使った校正の習慣化
- 温度補正(ATC)や応答性といった本体性能の理解
この4つが揃うことで、pH管理は驚くほど安定します。
pHは排水管理の入り口であり、トラブルの早期サインでもあります。だからこそ、測定器を正しく扱うことが、腐食防止・基準値遵守・薬剤コスト削減など、現場のあらゆる安定運転につながります。
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