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第2回「実は684m!?の東京スカイツリー」

いつも水や土と格闘しているセイスイ工業社員。その毎日を現場の厳しさそのままのハードボイルド・タッチでまとめました。この記事は外部取材チームが現場担当者に取材して作成したものです。第2回のテーマは、縁の下の水の力持ち、地中連続壁工法の成功の下にセイスイ工業の技術あり!

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「1Fで待っている」と言って、家族を「東京スカイツリー 天望デッキツアー」に送り込んだ。この634mの塔では毎日多数の人が空へ向かう。その前身の333mの東京タワーでもそうだった。「高いところに登って景色を見ることの何が楽しいのだろうか」とついアマノジャクなことを思ってしまう。関心はいつも、上ではなく地中にある。

1Fの鉄骨展示を見られるガラスケースの前に立った。ツリーを支える太い腕を突き上げたような頼もしい高強度鋼管の鉄骨は基礎部。最も太いものは「鼎(かなえ)」と呼ばれ、直径2.3m、厚さは10cm、重さは29トンに達する。巨大な鉄骨を前に身体中がゾクゾクしてきた。この鉄骨を支える杭の工事に携わった。地中の杭の施工に責任を負うのがセイスイ工業の仕事である。話は2007年12月の試験杭実験にまで遡る。

杭打ちはナックル・ウォール方式で

東京スカイツリーの施工を請負ったのは、大林組。セイスイ工業から掘削泥水管理の技術者として現場に詰めた。

スカイツリーの建つ墨田区は、軟弱地盤で、浸水、地盤沈下、液状化リスクがある。杭の打ち始めは砂地、その奥の地下35m より深い部分に硬い岩盤が出てくるというやっかいな地層であるため、着工の前に複数の杭打ち方式で強度比較実験を行った結果、今回はナックルウォール方式が選ばれた。これは、「砂浜に棒を深く差し込むと引っ張っても抜けない」という原理を応用し、杭の表面にナックル(拳)をつけて砂地で摩擦を生じさせ、杭を抜けにくくするというメカニズムだ。この方式で杭を打てば、高さ600m超の構造物が風であおられても倒れなくなる、というわけである。

このナックル付きの50mの壁が土中に50m垂直にさしこまれて、スカイツリーを支える土台、つまり杭になる。支える杭が地中で連続して連なって壁状になることから「地中連続壁」という工法名となった。

問題はこのナックル付きの壁を造築するためには、掘り下げた地中の壁面をなだらかにしなければならないことだ。掘り下げ面は砂あり、岩ありという土の壁、いかになだらかにできるのか?そこで、セイスイ工業の遠心分離による泥水の安定化技術の出番がやってくる。

杭工事開始、我々の出番

「地中連続壁工法」を使って、東京スカイツリーの杭工事が始まった。2008年7月、掘削開始。2種類の掘削機を使い分け、浅い砂地の地盤から徐々に深い層へと50m掘り下げていく。

とはいっても50mをただ掘り進めたのでは壁面は崩れてくる。崩壊させないために水を投入するのだ。掘削しながら坑(あな)に送水するのは微細粒子の玉を入れた泥水だ。微細粒子を掘削坑の隙間に侵入させて、坑の表面に泥壁(mud cake)と呼ぶフィルムをつくる。フィルムは水をはねとばし、逆に地下水が坑側へ漏出するのも抑える。つまり坑の壁面にスクリーンを張るようなものである。だが相手は砂の層だ。水の浸透が速い。

泥水の微細粒子濃度はどれほどが適切なのか? 水の濁り具合、粘度、流量を見ながら限界値を探る。泥水管理試薬で測定して最適な粒子量の値をはじき出す。最適な泥水にするため、坑内の泥水をポンプで吸い上げ、遠心分離機にかけて土砂を取り除き、分級させた(大きい粒子を取り除いた)水を坑にもどす。この調整がノウハウである。

掘削が終わると、鉄筋かごと鉄骨を入れてコンクリートを打設し、壁杭を造る。泥水は回収して次の掘削に使う。従来は廃棄していた泥水を再利用できるため廃棄物量は大幅に削減できる。こうして地下50mの77本の杭が連続壁としてジョイントされ、スカイツリーの三角形の土台全てを支える地中杭が完成した。

前例のない地下工事を終えて

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小さな会社が日本一のタワーの土台となる地下工事を担うことが、なぜできたのか。セイスイ工業は水処理のプロフェッショナルである。お客様の要望に応えるため、日々学び、技術を磨き、改良し、そして何かもっといい方法はないかと新しいことにチャレンジしている。それが積み重なり、世界的にも知られるこの大きな仕事に関わらせてもらえたのだろう。

工事を思い起こし、このタワーを見上げてこう思う。この日本一の塔の高さは、634mではない、本当は地中の50mを足して684mなのだ。

そろそろ家族が地上に降りてくる時間だ。私はシャトルエレベーターの乗降口に急いだ。

<取材後期>

高層建築物の地中連続壁工法が使われた高層建築物の施工では50現場以上、石油設備施工や温泉掘削工事では100現場以上で、セイスイ工業の技術は使われています。

参考文献:『東京スカイツリー完成までの軌跡』日本経済新聞社編 2012年

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