BODの「mg/L」ってどれくらい汚い?単位と負荷量を正しく理解する基礎知識
「BODの値が高くなった」「mg/Lってどういう意味?」
排水処理の担当者が最初にぶつかるのが、この単位の壁です。
例えば「5 mg/L」と「200 mg/L」。数字の違いだけでなく、実際の水質としてどれくらい汚いか、パッとイメージできますか?この「数字感覚」を身につけることこそ、適切な運転管理への第一歩です。
本記事では、現場で役立つ「単位の読み解き方」を解説。「mg/L」と「ppm」の関係や、濃度から汚れの総量(kg)を知る方法など、ベテランの頭の中にある計算式をわかりやすく紐解きます。
👉 この記事でわかること
- BODの単位「mg/L」が表す意味と、ppmとの関係
- 数字を見ただけで「どのくらい汚いか」がわかる直感的な目安
- 設備管理で失敗しないための「負荷量(kg)」の計算と見方
BODの単位はなぜ「mg/L」なのか
分析表にある「mg/L(ミリグラム・パー・リットル)」という単位。専門的に見えますが、分解すると意味はとてもシンプルです。
mg/L が表すのは「汚れの濃さ」
「水1リットルに、汚れが何mg入っているか」を表します。 スープの塩と同じで、数字が大きいほど味が濃い(=汚い)というイメージです。
- 数字が小さい = 汚れが薄い(きれい)
- 数字が大きい = 汚れが濃い(汚い)

「ppm」が出てきても同じでOK

古い資料や参考書では、mg/L の代わりに「ppm(ピーピーエム)」という単位が使われることがありますが、排水処理では「1mg/L=1ppm」と考えてほぼ問題ありません。
- mg/L: 重さの濃度(1Lあたり何mgか)
- ppm: 割合(100万分の1)
厳密には水より重い(比重が高い)排水ではズレが生じますが、現場の目安としては「ppm」という表記を見かけても、「mg/Lのことだ」と脳内で変換して読み進めて大丈夫です。ただし、法律上の正式な単位はあくまで「mg/L」です。
BOD値の“数字感覚”を身につける
「BOD120mg/L」と言われても、どのくらい汚いのか、ピンとこないですよね。まずは、数字で「水の景色」が思い浮かぶような目安を作りましょう。
数字と水質イメージの対応
ざっくりと、以下の4段階でイメージしていきましょう。
- 【1mg/L】ヤマメが住める清流:山奥の渓流や、飲料水の水源になるレベル
- 【3mg/L】普通の街の川:コイやフナは住めるが、泳ぐには少し抵抗があるレベル
- 【10mg/L】ドブ川・排水基準の境目:川だと「汚い」と感じ、夏場はドブ臭(硫化水素臭)が出始め、魚が住むのが難しいレベル。
- 【100mg/L以上】完全に「汚水」:未処理の生活排水(約200mg/L)や工場の排水、そのまま川に流すと魚が死に環境破壊になるレベル

基準値の読み方のコツ
BODの基準値は、「どこへ流すか」によって厳しさが変わります。
- 川や海へ流す場合(厳しい):法律基準160mg/L、条例10〜20mg/L以下
法律上の基準は最大160mg/L(日間平均120mg/L)自治体の条例(上乗せ基準)がある地域では、10〜20mg/L以下が求められる。自然に直接戻すため、魚が住めるレベルまでの浄化が必要。 - 下水道へ流す場合(ゆるい):目安300〜600mg/L 以下
下水処理場で処理場できれいにするため、配管が詰まらない程度なら許容される。
【現場のポイント】
自社の排水は「川」と「下水」どちらに流しますか? 行き先によって目指すゴール(数値)が変わります。まずは確認しましょう。
濃度(mg/L)から負荷量kg/日との関係
現場で設備を守るには、濃度(mg/L)だけでなく、汚れの総量である「負荷量(kg/日)」を見る癖をつけましょう。
なぜ「負荷量」で見る?
「mg/L」はあくまで「濃さ」であって、「量」ではありません。微生物や処理設備にとって、大変なのは「濃い水を処理すること」よりも、「大量の汚れ(kg)を食べること」です。
たとえ濃度が薄くても、水量が膨大なら汚れの総量(負荷)は巨大になり、設備はパンクします。

簡単な計算イメージ
負荷は「濃度(mg/L)×水量(m³)」で計算します。
例:BOD200mg/Lの排水が、1日1,000m³出る場合
200(濃度)×1,000(水量)÷1,000=200kg/日(※単位合わせのために1000で割ります)
現場でよくある“勘違い”

- ❌「水で薄めれば(希釈すれば)大丈夫」
排水を水で薄めて排出する行為は、法律や条例で禁止されており、処罰の対象になります。また、汚れの総量(kg)は変わらないため、環境への負荷も減りません。 - ⭕「濃度は高いけど、水量がちょっとならOK」
BOD2,000mg/Lでも、コップ1杯程度なら負荷(kg)は微々たるもの。設備への影響はほぼありません。
【現場の鉄則】
「濃度」だけでなく、「水量」もセットで確認しましょう。
BODの単位が示す「運転管理」のヒント
BODの数字は記録するだけでなく、異常に気づくための「センサー」として使いましょう。
モニタリングは「セット」と「推移」で
BOD単体ではなく、以下の視点を持つことが重要です。
- 流量・CODと「セット」で見る
BODは結果が出るまで5日かかります。すぐにわかる「COD」や「流量」の変化から、5日後の値を予測しましょう。 - グラフの「推移」で見る
その日の数値より「1週間の動き」が重要です。「徐々に上がっている」傾向が見えたら、トラブルの前兆です。
レポート・帳票の読み解き方
- 単位を指差し確認する
「mg/L(濃度)」と「kg/日(負荷)」の取り違えは致命的なミスになります。必ず単位欄を確認しましょう。 - BODは「会社の通信簿」
この数値は、企業の環境への配慮を示す重要指標です。現場の管理レベルが、そのまま会社の信頼性に直結します。
他の水質指標(COD・T-N・T-P)との付き合い方
単位はすべて同じ「mg/L」ですが、中身と役割が違います。
似ているけれど「中身」は別物
- COD(化学的酸素要求量)
薬品で分解して測ります。結果がすぐ出るため、「BODの速報値」として便利です。 - T-N(窒素)・T-P(リン)
汚れというより「栄養分」です。BODが低くても、これらが残っていると赤潮の原因になります。

「どの数字」を「何のため」に見る?

流す場所で指標が変わります。
- 川へ流す場合👉BODが基準
- 海・湖へ流す場合👉CODが基準(BODは使いません)
- 閉鎖性海域(東京湾など)👉窒素(T-N)・リン(T-P)の総量規制も加わる
【現場のまとめ】
健康診断と同じです。体重(BOD)だけ測っても健康とは言えません。血圧(N・P)なども含め、複数の数字を組み合わせて水の状態を判断しましょう。
まとめ:数字の意味がわかれば、管理はもっとラクになる
BODの「mg/L」は単なる記号ではなく、設備の負担を教えてくれるメッセージです。 これさえ読めれば、トラブルを未然に防ぐことができます。
覚えておきたい3つのポイント
- mg/L=「汚れの濃さ」
数字が大きいほど「味が濃い(汚れている)」状態です。 - 基準値は「行き先」で決まる
川へ流すなら厳しく、下水なら緩く。ゴールは放流先次第です。 - 本当の敵は「負荷量(kg)」
濃度が低くても、水量が多ければ設備はパンクします。「濃度 × 水量」で総量をチェックしましょう。
「うちの設備の能力で、今の負荷(kg)は大丈夫かな?」 もしそんな不安を感じたら、ぜひ一度ご相談ください。数字の読み解きから具体的な対策まで、現場目線でサポートします。
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