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水処理コラム

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硫化水素中毒とは?症状・応急処置・作業時の安全対策をわかりやすく解説

硫化水素中毒

前回の記事では、硫化水素が「どこで発生し、なぜ危険なのか」を整理しました。

しかし、現場で最も深刻なのは、硫化水素が実際に人の身体に何を起こすのかを理解しているかどうかです。

どれだけ発生源を管理していても、作業中のちょっとした変化――
「目が痛い」「少しめまいがする」といった違和感に気づけなければ、中毒事故は防げません。硫化水素は、20〜30ppmから臭いを感じにくくなり、100ppmを超えると嗅覚が完全に麻痺して無臭になります。

つまり、“危険を感じたときには、体内では中毒が始まっている” というのがこのガスの厄介な点です。

本記事では、これまでの「仕組み・危険性」の理解を踏まえ、硫化水素中毒そのものに焦点を当てて、症状・兆候・応急対応・防止策をわかりやすく解説します。現場で仲間を守るために、必ず押さえておきたい内容です。


👉 この記事でわかること

  • 硫化水素中毒が“体内でどのように起きるか”
  • 濃度別の症状と、初期段階での「危険サイン」
  • 中毒が疑われた際の正しい救出・応急対応
  • 二次災害を防ぐための現場での安全ルール

目次

硫化水素中毒とは

硫化水素中毒は、「吸い込んだ量が多いほど症状が強くなる」という単純な仕組みではありません。実際には体内のエネルギー産生を止めてしまう細胞レベルの障害が突然起こるため、短時間で重篤化する点が最大の特徴です。

細胞レベルでの作用(ミトコンドリア阻害)

硫化水素は、細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアに作用し、エネルギー産生を止めてしまいます。

  • 体内の酵素(チトクロムオキシダーゼ)を阻害
  • 酸素があっても細胞が利用できない状態
  • 見かけ上は呼吸していても、体は“酸欠”と同じダメージ

つまり、硫化水素中毒は「体が酸素を使えなくなる中毒」です。これが、急激に倒れる・意識を失う原因です。

ミトコンドリア阻害

神経・呼吸への影響が急激に進む理由

影響が急激に進む理由

硫化水素の危険性は吸い込みから発症までが極めて短い点にあります。

  • 血液への吸収が非常に速いため、全身に一瞬で広がる
  • とくに脳・呼吸中枢(延髄)に直接作用し、呼吸停止を招く
  • 数吸気で突然倒れるケースが多く、逃げる時間がない

「急に倒れた」「周囲の作業者も救助で巻き込まれた」という事故が多いのは、この急激な作用が理由です。

濃度別にみる硫化水素中毒の症状

硫化水素は、濃度によって症状の深刻度が一気に変わるガスです。特に危険なのは、20ppm付近から嗅覚麻痺が起こり、臭いで危険を察知できなくなること。そのまま高濃度領域に入ると、数呼吸で致命的な状態に至ります。

以下は、現場で危険度判断に使える「濃度別の症状まとめ」です。

濃度別・症状まとめ

濃度 (ppm)

主な症状・身体反応

現場での判断・危険度

〜 10 ppm

(注意レベル)

【強い腐卵臭】

  • 不快な臭いがするのみ。
  • 直ちに健康被害が出るレベルではない。

異常発生のサイン

ガスの発生源を特定し、換気を開始する段階。

10 〜 50 ppm

(警告レベル)

【粘膜刺激】

  • 目がチカチカする、涙が出る。
  • 喉のイガイガ、咳。
  • 臭いに慣れて鈍くなり始める(嗅覚疲労)。

作業中止・即時退避

法令上の「許容濃度(10ppm)」超過。

「目が痛い」は体が発する最終警告です。これ以上留まると肺水腫のリスクがあります。

50 〜 150 ppm

(危険レベル)

【嗅覚麻痺(無臭化)】

  • ある時点から急に臭いがしなくなる
  • めまい、吐き気、判断力の低下。
  • 重度の気管支炎、肺水腫。

魔の領域(判断不能)

「臭いが消えた=ガスがなくなった」と錯覚して死に至る最も危険な領域。

絶対に一人で行動してはいけません。

200 〜 700 ppm

(致死レベル)

【急性中毒・意識障害】

  • 肺水腫による呼吸困難。
  • 30分〜1時間程度の滞在で死亡する可能性。

救助には空気呼吸器が必須

防毒マスクでは対応できません。

救助者も巻き込まれる二次災害の多発領域です。

700 ppm 以上

(即死レベル)

【ノックダウン(瞬時昏倒)】

  • 一呼吸しただけで神経が麻痺し、即座に倒れる
  • 呼吸停止、心停止。

生身での接近は自殺行為

「息を止めて助ける」ことも不可能です。

空気呼吸器なしでは絶対に近づけません。

作業中に“中毒の兆候”を見分けるポイント

硫化水素中毒は、症状が出た時点ですでに危険領域に入っているケースが多く、早期発見が命を守ります。本章では現場で即チェックできる兆候をまとめました。

初期症状で気づくためのチェック

硫化水素の中毒は、まず軽い不調として現れます。以下のサインが1つでもあれば、作業を中断し濃度を再測定してください。

  • 10ppm:腐卵臭(不快な臭い)
  • 10ppm〜:目のヒリつき、流涙、咳き込み
  • 軽い頭痛・めまい・集中力低下
  • 複数の作業員に同時に同じ症状が出る

低濃度〜中濃度(0.1〜20ppm・20〜100ppm)に入っている可能性が大きいです。特に複数名の同時症状は、環境の悪化を示す重要なサインです。

初期症状

作業者の行動・判断の変化に注意

作業者の行動・判断の変化

硫化水素は、20〜30ppmから臭いを感じにくくなり、100ppmを超えると嗅覚が完全に麻痺して無臭になります。本人が自覚しないまま危険領域へ入るため、周囲の観察が重要です。

  • 返答が遅い・ぼんやりしている
  • 動きが鈍い、いつもより反応が悪い
  • 立ちくらみやふらつきが見られる

➡これは中濃度〜高濃度(20ppm以上)に入ったサインで、即退避レベルです。

作業環境の変化が示すリスク

人の症状と同時に、設備・環境の変化も危険の予兆になります。

  • 換気が弱まっている(送風機停止・風量不足)
  • 流量が止まり、嫌気化が進む状況が発生
  • 蓋を開けた瞬間に空気の流れが不自然に感じる

➡特に蓋開放時の「空気が押し返すような動き」は、ピット底部に高濃度の硫化水素が溜まっている典型的な兆候です。

作業環境の変化

硫化水素中毒が疑われる場合の応急処置

硫化水素中毒は、発見から数分の対応が生死を分けます。

ただし、救助者が無防備に近づくと二次災害が起きるため、まず「救助者自身の安全確保」が絶対条件です。ここでは、現場で必ず押さえておきたい応急対応の流れをまとめます。

救出時の安全確保(絶対条件)

硫化水素事故で最も多いのが「救助者が巻き込まれる二次災害」です。 以下の安全確保なしに現場へ入ってはいけません。助けに入る前の30秒が二次災害を防ぎ、最終的に被災者の命を救います。

  • 救助者は必ず空気呼吸器(SCBA)を着用する(防毒マスクは使用不可
  • ガス濃度を再測定し、危険濃度であれば入らない
  • 強制換気を実施し、安全が確認できるまで立ち入り禁止

濃度が不明な場所や救助活動では、防毒マスクは役に立ちません。必ず外気を吸える装備を使用してください。

救出後の対応手順

被災者を安全な場所へ搬送したら、以下の手順で速やかに状態を確認し、必要な応急処置を行います。救急要請は最優先。応急処置と同時進行で行うことが重要です。

  1. 新鮮な空気の場所へ移動
    ・ピット周辺は残留ガスが多いため、できるだけ風通しの良い場所へ。
  2. 呼吸状態・意識レベルの確認
    ・呼吸が浅い/不規則/停止している
    ・呼びかけに反応しない、意識レベル低下。これらは重度中毒のサインです。
  3. 必要に応じて心肺蘇生(CPR)
    ・呼吸がない場合は、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を実施。
    ・AED が使用できる環境であれば、速やかに準備。
    ※救助者が呼気を吸い、二次災害になる可能性があるため、口対口の人工呼吸は厳禁

救急搬送時に伝えるべき情報

病院側が適切な処置を行うためには、現場の状況情報が非常に重要です。救急隊へは、次の3点を必ず伝えましょう。情報が揃うほど、医療側は迅速かつ適切な治療ができます。

  • 推定される硫化水素濃度:可能であればガス測定器の値を提示
  • 曝露時間:何分間暴露した可能性があるか
  • 症状の変化:倒れる前の行動、意識の変化、呼吸状態の推移など
応急処置フロー

硫化水素中毒を防ぐための作業手順

硫化水素中毒は、作業前の判断・作業中の監視・設備の標準化によって大きく防ぐことができます。ここでは、現場で必ず徹底すべき3つの仕組みを整理します。

立ち入り基準とチェックリストの明確化

硫化水素事故の多くは、「安全かどうかの基準が曖昧」な現場で発生しています。まずは、誰が見ても判断できる「立ち入り基準」を明確化することが重要です。「測る→判断する→記録する」がルールとして回れば、事故は大幅に減ります。


  • 何ppm以上で作業禁止かを現場ルールとして明文化する
    例:5ppm超→作業禁止、10ppm超→退避&換気
  • 作業前に必ずガス測定→記録を残す
    測定値は、後から確認できるように帳票化
  • 開口前・開口後の両方で測定する
    蓋を開けた瞬間に濃度が跳ね上がるケースが多いため
立ち入り基準とチェックリスト

監視体制の強化

入槽作業やピット作業では、「一人作業の禁止」が鉄則です。事故の多くは、監視員が不在で異変に気づくのが遅れたケースです。監視体制は、中毒事故を最も確実に防ぐ「最後の砦」です。

監視体制の強化


  • 地上監視員の役割と判断基準を明確化
    作業者の状態を常時監視、異変時は作業中止の判断を即時下す
  • 複数人作業を徹底する
    入槽者+監視員の最低2名体制、無線・声掛けを使い、常に連絡を取れる状態を維持
  • 監視員は“作業を手伝わない”
    監視に集中するため、他作業との兼務は禁止

保護具と設備の標準化

安全対策は、個人任せにすると事故につながりやすいため、標準装備・標準手順として整えることが重要です。人によって対策が違うことをなくすことで、中毒リスクは劇的に下がります。


  • 呼吸保護具の適正選択
    ・5〜10ppmでも危険な作業は吸収缶式では不十分
    ・濃度が不明・急上昇リスクがある現場では、必ず送気マスク・空気呼吸器を使用する
  • 換気設備・送風機の操作ルールを統一
    ・強制換気の開始タイミングを作業手順書に明記
    ・風量不足や停止を防ぐため、定期点検を標準化
  • 使用機材・チェック項目の統一
    ・ガス検知器の校正
    ・保護具の使用前点検
    ・作業前ミーティングの必須化
保護具と設備の標準化

まとめ:硫化水素中毒は“早期発見”と“手順徹底”がカギ

硫化水素中毒は、臭いでは判断できず、短時間で重症化する危険なガスです。しかし、以下の基本を徹底すれば多くの事故は防げます。

  • 中毒の仕組みを理解し、初期症状に気づくこと
  • 測定・換気・監視などの作業手順を確実に守ること
  • 応急処置の流れを現場全員が共有しておくこと

「最近臭いが強い」「作業中に頭痛が出る」など、小さな違和感も重要なサインです。気になる点があれば、早めの見直しが安全確保につながります。

水処理に不安がある方は、ぜひセイスイ工業へご相談ください。現場状況に合わせて最適な対策をご提案します。

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