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水処理コラム

COLUMN

水処理に関する用語

純水とは?水道水・蒸留水・超純水との違いと用途をわかりやすく解説

純水とは

純水とは、不純物をほとんど含まない水であり、その純度によって多様な性質と用途を持ちます。産業の最前線から、私たちの身近な生活まで、純水は実に幅広い場面で重要な役割を果たしているのです。この記事では、水処理の専門家である水野賢一が、純水の基礎知識から、産業・家庭での実践的な活用法、そして気になる健康面までを網羅的に解説します。

この記事でわかること

  1. 純水と水道水、超純水、その他の水との明確な違い
  2. 純水が持つ特異な性質と、その幅広い活用シーン
  3. 家庭で純水を手に入れる方法と、気になる健康への影響

純水とは何か?定義と水質の違いを徹底解説

純水は不純物を取り除いた水で、その純度は電気抵抗率で測られ、超純水とは厳密な基準で区別されます。

純水とは?その定義と基本的な性質

「純水」と聞くと、多くの方は「きれいで透明な水」を思い浮かべるかもしれませんが、その定義は意外と奥深いのです。純水とは、水に含まれる不純物、特にミネラルやイオン成分をほとんど取り除いた水のことを指します。

水道水には塩素やカルシウム、マグネシウムなどが含まれていますが、純水はこれらを極限まで除去しています。

純水の特徴の一つは、「ものを溶かす力が強い」ことです。不純物がほとんどないため、他の物質を溶かしやすく、洗浄や希釈など幅広い産業用途で活用されています。

超純水・蒸留水・精製水・脱イオン水との違い

一口に純水といっても、目的や純度によって種類が分かれます。特に混同されやすいのが、超純水、蒸留水、精製水、脱イオン水です。それぞれの特徴を理解することが、用途に合った水を選ぶうえで重要です。

超純水は、純水からさらに不純物を極限まで取り除いた水で、比抵抗値が18.2MΩ・cmに達する非常に高い純度を持ちます。イオン成分がほとんどなく、電気を通しにくいのが特徴です。

蒸留水は、水を蒸発させてから冷やして再凝縮した水で、揮発しない不純物を除去できます。

精製水は、日本薬局方で定められた基準を満たす水で、蒸留やイオン交換などで作られ、医療や化粧品分野で使われます。

脱イオン水は、イオン交換樹脂を使って陽イオンや陰イオンを除去した水で、電気を通す原因となるイオン成分を取り除いています。

これらの違いを理解することで、使用目的に最適な水を選ぶことができます。

水の種類

定義

主な除去不純物

比抵抗値目安

主な用途

補足

水道水

公衆衛生基準を満たす飲料水

微生物、塩素、ミネラルなど

~約0.005 MΩ・cm

飲用、一般生活用水

一般的な生活用水

純水

不純物(イオンなど)をほぼ除去した水

イオン、有機物、微粒子

0.05~1 MΩ・cm程度

工業用洗浄、ボイラー給水、加湿器

用途により純度要件が異なる

超純水

純水をさらに高度に精製した水

イオン、有機物、微粒子、微生物、溶存ガスなど

18.2 MΩ・cm(理論最大値)

半導体製造、医薬品製造、研究用

極めて高い純度が必要な精密分野

蒸留水

水を蒸発・凝縮させて製造した水

イオン、微粒子など(揮発性物質は残る場合あり)

純水と同程度

実験用、バッテリー液、医療用

加熱・冷却による物理分離

精製水

日本薬局方で定められた水

イオン、有機物、微粒子、微生物など

純水と同程度

医薬品製造、医療用、化粧品

医薬品製造基準に準拠

脱イオン水

イオン交換樹脂でイオンを除去した水

イオン

純水と同程度

一般実験用、洗浄用

イオン成分のみに特化して除去

水の純度を測る指標:比抵抗値とTOCとは

水の純度を評価する際には、主に「比抵抗値」と「TOC(全有機炭素)」という指標が使われます。

比抵抗値は、水が電気を通しにくい度合いを示し、数値が高いほどイオンが少なく、純度が高いことを意味します。イオンが多いと電気が流れやすくなるため、比抵抗値の低い水は不純物が多いと判断されます。半導体や医薬品の製造では、特に厳密な管理が求められます。

TOCは、水に含まれる有機物の量を炭素量で表す指標です。有機物は微生物の増殖や化学反応への悪影響を引き起こすため、超純水ではTOCも重要な管理項目です。

これらの指標によって、水の純度を客観的かつ科学的に評価できます。

純水の多様な活用シーン:産業から家庭まで

純水は洗浄や希釈に優れ、半導体製造から家庭の加湿器まで幅広い分野で製品品質向上やトラブル防止に貢献します。

産業界における純水・超純水の重要性

純水、とくに超純水は、現代の高度な産業に欠かせない基盤です。不純物をほとんど含まない性質が、製品の品質や生産効率に直結するためです。

たとえば半導体製造では、微細な不純物すら致命的となるため、超純水が回路形成や洗浄に使われ、不良の低減と歩留まり向上に貢献しています。医薬品や化粧品、食品分野でも、製品の品質保持や微生物対策として純水が使われ、日本薬局方の基準を満たす水質管理が求められます。

さらに、工場やビルのボイラー給水でも、スケールの発生を防ぎ、設備寿命やエネルギー効率の維持に純水が活用されています。

産業分野で純水・超純水を使う際に重要なのは、「用途に応じて、どの程度の純度が必要か」を明確にすることです。純度が高すぎればコストが増し、逆に低すぎると製品不良や設備トラブルにつながります。 私も新人時代、ボイラーのスケール問題に悩み、「とにかく不純物ゼロ」と考えていましたが、先輩から「目的に応じた水質管理が重要」と教わりました。この経験からも、純度は“高ければ良い”のではなく、最適なバランスを見極めることが鍵だと実感しています。

家庭で役立つ純水の意外なメリット

純水は産業だけでなく、実は私たちの日常生活でもその力を発揮します。特に身近な例としては、以下のようなものがあります。

  • 加湿器の白い粉対策
    加湿器から出る白い粉は、水道水のミネラル成分が原因。純水を使えばミネラルを含まないため、白い粉の発生を防げる。
  • 洗車のウォータースポット防止
    水道水で洗車すると、乾いたあとに白い斑点が残ることがある。これはミネラルによるもので、純水で最後にすすげば、跡が残らずクリアに仕上がる。
  • 料理や飲み物の味を引き出す
    純水は不純物が少なく、素材の風味を邪魔しない。コーヒーやお茶も、よりすっきりした味わいになる。RO水を使ったウォーターサーバーもある。
  • レンズやガラスの洗浄に便利
    純水で拭くと水垢や拭き跡が残りにくく、メガネやスマホ画面、窓ガラスなどをきれいに仕上げられる。

このように、純水は私たちの生活の質を高める様々な場面で活用できる可能性を秘めています。

純水はどのように作られるのか?主要な製造方法と装置

純水は蒸留、RO膜、イオン交換などの技術を組み合わせて作られ、目的の純度に応じた最適な精製システムが構築されます。

主要な精製方法

純水や超純水を製造するには、原水から様々な不純物を除去するための特殊な技術が必要です。主な精製方法として、以下の4つが挙げられます。

  • 蒸留(Distillation)
    水を加熱して蒸発させ、その蒸気を冷やして再び水に戻す方法。不揮発性の不純物(ミネラルや重金属、微生物など)を除去できる。古くからある方法だが、エネルギー消費が大きい。
  • 逆浸透膜(RO膜)
    非常に細かい孔(約0.0001ミクロン)を持つ膜に圧力をかけ、水だけを通す方法。イオン、有機物、微生物などをほとんど除去できる。効率が高く、多くの純水装置で使われている。
  • イオン交換
    イオン交換樹脂を使って、水中のイオンを吸着・除去する方法。陽イオン交換樹脂はプラスのイオン、陰イオン交換樹脂はマイナスのイオンをそれぞれ取り除く。無機イオンの除去に効果的。
  • 連続式電気脱イオン(EDI)
    イオン交換樹脂と直流電流を組み合わせて、イオンを連続的に除去する方法。薬品による再生が不要で、環境負荷が少なく、高純度の水を安定して得られる。

純水製造装置の基本的な仕組みとフロー

高純度の純水を得るには、複数の精製方法を組み合わせた装置が使われます。

まず原水(水道水など)を砂ろ過や活性炭で前処理し、大きな不純物や塩素を除去します。次にRO膜(逆浸透膜)でイオンや有機物、微生物を取り除き、RO水を生成します。

その後、イオン交換樹脂やEDIで微量のイオンをさらに除去し、必要に応じて紫外線殺菌や微粒子除去も行います。最終的に純水はタンクに貯められ、必要な場所へ供給されます。

このように多段階の処理により、高純度の純水を安定して得ることができます。

純水製造装置のプロセス

純水に関する「よくある疑問」を専門家が解説

純水は飲用可能ですがミネラルは含まれず、家庭では浄水器や市販品で入手可能です。製造には環境負荷が伴うため、目的に合わせた最適な純度選択が重要です。

純水は飲んで大丈夫?ミネラルは摂取できる?

純水は不純物をほとんど含まないため、飲んでも健康上の問題はありません。ただし、水道水や天然水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルも除去されている点が大きな違いです。

厚生労働省によると、ミネラルは健康維持に必要ですが、食事から十分に摂取できるため、純水を飲むこと自体が健康に悪いという根拠はありません。

市販のウォーターサーバーに使われているRO水も純水に近く、飲みやすいようにミネラルを添加している製品もあります。純水を飲料水として使う場合は、味の好みやミネラル摂取のバランスを考慮すると良いでしょう。

家庭で純水を手に入れるには?市販品・浄水器の選び方

家庭で純水を使いたい場合、最も手軽なのはドラッグストアなどで手に入る「精製水」です。加湿器やアイロン、洗車などに使え、日本薬局方の基準を満たしています。

ウォーターサーバーの中には、RO膜でろ過した純水(RO水)を提供するタイプもあり、飲用や料理にも利用できます。

さらに高純度の水を自宅で得たい場合は、家庭用の蒸留水器やRO浄水器の導入も選択肢です。初期費用はかかりますが、長期的にはコスト面で有利なこともあります。なお、一般的な浄水器では純水レベルの浄化はできません。

家庭で純水を使うなら、目的とコストのバランスが大切です。加湿器の白い粉対策には、市販の精製水が手軽で、使用頻度が高い場合は家庭用蒸留水器が経済的です。 私も以前は水道水を使って白い粉に悩まされていましたが、小型の蒸留水器を導入してからは手間も減り、コスト面でも満足しています。毎日使うものだからこそ、手間とコストのバランスを見極めることがポイントです。

純水製造と環境負荷:知っておくべきこと

純水・超純水の製造には高度な技術が必要ですが、環境への配慮も欠かせません。特にRO膜を使う場合、不純物を含んだ濃縮水が排出され、電力消費や樹脂の再生・交換も発生します。

そのため、エネルギー効率の改善や排水削減、資材のリサイクルなど、環境負荷を抑える取り組みが進められています。持続可能な製造を実現するための技術開発が今も続けられています。

純水装置のコストと維持管理の目安

純水製造装置のコストは、求める純度や処理量、装置の種類によって大きく異なります。産業用の大型装置では、導入費用が数百万円〜数億円にのぼることもあり、設置費やメンテナンス、消耗品の交換費用も必要です。

家庭用なら、精製水は1リットル数十円〜数百円、小型の蒸留水器やRO浄水器は数万円〜十数万円程度が目安です。電気代やフィルター交換などのランニングコストも考慮し、初期費用だけでなく長期的な運用コストも含めて検討することが大切です。

まとめ:あなたの目的に最適な「純水」の選択を

純水は、用途に応じて最適な純度を選ぶことで、産業から家庭まで幅広くその価値を発揮します。不純物の少なさが特徴であり、精密洗浄や快適な暮らしの実現に欠かせない存在です。

本記事では、純水の定義や他の水との違い、具体的な活用例、製造方法、注意点までを解説しました。重要なのは「何のために純水を使うのか」を明確にし、それに合った純度や処理方法を選ぶことです。純度が高ければ良いわけではなく、過不足ない選択がコストと効果のバランスを高めます。

業務の品質向上や生活の快適化を目指す方にとって、純水の理解は有益な知識です。ぜひこの記事を参考に、より良い「水」の使い方を見つけてください。

参考文献・関連情報

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