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第8回「処理困難物という怨霊」

いつも水や泥と格闘しているセイスイ工業社員。実際の事例を基に、ドラマパートに一部フィクションを加え、楽しく読めるハードボイルド・タッチでまとめました。この記事は外部取材チームが現場担当者に取材して作成したものです。

第8回のテーマは「処理困難物という怨霊」です。

下水処理場の排水処理に困り果てた一本の電話で始まった

私は場末感が漂うコインランドリーにいた。コンクリートの床、ビニールカバーの破れた椅子、壁には洗剤と漂白剤のレバー式の自販機。天井からの吊り下げ台にテレビがのっていた。映るはずがない代物だ。今は消滅したブランドの洗濯機の蓋を開けて、汚れた作業服と洗剤を投入した。作業着が数日ぶりのお風呂を楽しむように回りだした。

私は疲れきって椅子に腰掛けた。地方の現場でカンヅメとなり、車中泊が3日続いている。だれかが来て乾燥機に洗濯物を入れ、去っていった。乾燥機の丸い窓の向こうで、洗濯物がぐるぐると回りだした。私は胸騒ぎを覚えた。ある分別困難な固形物処理を思い出したのだ。あれは首都圏近郊の巨大な下水処理場でのことであった。

下水処理場に流れこむ下水は、汚泥を分別し浄化されてから放流される。その過程で出た汚泥は、汚泥処理タンクに移されて処理される。その巨大な下水処理場は汚泥処理をこれまで敷地内の汚泥処理タンクで行っていたが、今後は別施設で処理することになり、汚泥処理タンクが不要になった。タンクの分解廃棄前に、内部に溜まった汚泥処理が必要になった。請負元のゼネコンは「バキュームで吸えば終わりだ」と考えた。直径20メートル、高さ15メートルのタンク内に沈殿している汚泥は、全体量の3%、たいしたことはないはずだった。

それはとんでもない見込み違いだった。 ゼネコンが用立てたバキューム車は唸りをあげたが汚泥を吸えなかった。調べたところ、吸引できるようにするためには水での希釈が必要で、そうすると総量は当初見込みの10倍にもなる。予算が3億なら30億だ。そんな請求はできっこない。ゼネコンは困り果てて、我々セイスイ工業に泣きついてきた。我々も当初は甘かった。クレーンでタンクにポンプを下ろして、汚泥水100トンは1時間で吸い上げ完了と見積もった。ところがポンプが30秒で停止した。モーターが焼けたのか?とポンプを分解すると、羽根や軸にゴミがからまっていた。モーターさえ止めるゴミの正体は何か?

強力なポンプが手も足も出ない処理困難物の正体とは?

びっしりと長い毛がからまりついていた。機器の復旧に3日を要した。今度は直径150ミリの管を持つ汚物用ポンプを投入した。トイレットペーパーさえ吸い込む力持ちだ。さあどうだ、汚水を吸い出せ!今度は3分で停止した。分解すると長い髪の毛は吸い込んだが、カーペットのようなものがポンプを詰まらせていた。

「髪の毛でできたタタミイワシだ・・・」

髪の毛が絡まり合って結合した板状の固形物が出来上がっていた。

そこで今度は髪の毛を切断しようと汚泥カッターを導入した。しかし、切るには汚泥を直径数ミリの穴を通す必要があり、タタミイワシは通らない。無駄に2週間が過ぎた。私は焦りだした。ゼネコンからは当てが外れたといわれた。現場所長は腕を組んで何も言わなかった。私は考え続けた。閃いたのは「汚物を羽根に通さずに移す」ことだ。そんなポンプがあるだろうか?

「そうだ!サイクロン方式のボルテックスポンプなら!」

ボルテックスポンプは、羽根車を通さずに汚泥を吸い込んで排出する気流構造がある。サイクロン掃除機のようなものだ。これで汚泥の吸い上げには成功、一歩前進である。だが髪の毛を分別しない限り水処理設備に移せない。金属網上で振動ブルイをかけたが、網が目詰まりした。タンク上にグレーチング(道路際にある鉄の格子蓋)を敷き詰めてみたが、やはり詰まった。

「髪の毛の呪いか・・・」

ホラー映画でテレビから這い出てくる女の長い髪の毛が思い起こされた。

脱水槽が窮地を救う!数十億円の経費を節約!

何もできないまま1ヶ月が過ぎた。焦りは嘆きに変わった。そんな時、業者仲間に愚痴ると、情報を得た。九州にそのような処理をやる業者がいるという。さっそく連絡をつけて、はるばる運び込んだのが「トロンメル」である。直径1メートル、長さ5メートルの金属筒は、全面に穴が開いたスクリーンである。その中に汚泥を通して回すと、穴から水が落ち、ゴミが筒内に残った。

「まるで脱水槽のようじゃないか」

内部に残った髪の毛を次の工程であるスクリュープレスにかける。それはやはり円筒状のスクリーンで、内部でゆっくり回るスクリューで汚泥を圧搾し、出口に移す。排出口から落ちたのは見事なまでにパサパサになった髪の毛であった。

「ついに呪いが解けたぞ!」

それから処理はスムーズに進み、当初の予算で収まった。あやうく30億円になるところ20数億円の節約だ。ゼネコンは「さすがはセイスイ」と喜び、「年間職長賞」の表彰をしてくれた。処理場の現場所長も感心し、付き合いは今でもある。なお、この工事がきっかけとなり、「トロンメル」「スクリュープレス」の2つの役割を果たす「ロータマット」という設備を後にセイスイ工業で購入し、現在は2台保有している。そして同様の汚泥処理を何件も請負ってきた。移動式でこの処理をできるのは日本全国でセイスイ工業しかないからだ。2019年、2020年の台風・大雨災害では、熊本県の人吉、長野県の千曲で被災した下水処理場でこの「ロータマット」を使用し、迅速な災害復旧に貢献することができた。

人気のないコインランドリーで独り感慨にふけっていると、ガガガガ・・・という音声が聴こえてきた。なんだろう?と見ると、吊り下げられたテレビの画面が乱れていた。映るはずがないのに・・・と思っていると、画面に女が現れた。長い髪で顔は見えない。女が言った。

「あたしを出してくれてありがとう・・・」

女はテレビから出て、コインランドリーの外へ出て行った。私はハッと我にかえった。乾燥機は止まり、洗濯物もなかった。まとわりつくような車中泊の疲れがとれてきた。私は清潔な洗濯物を抱えて現場に向かった。

セイスイ工業の「下水汚泥処理システム」で下水処理場の課題解決

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