下水道の人材不足対策|外部委託・仮設水処理の選定基準と仕様書作成のポイント
下水道施設の老朽化や災害リスクが高まる一方で、自治体では技術職員の不足や業務の属人化が課題になっています。
国土交通省の『新下水道ビジョン加速戦略』でも、下水道サービスを支える技術者等の人材確保・育成は重要な施策として位置づけられています。また、上下水道政策の検討会でも、広域連携・官民連携・DX活用とあわせて、人材不足への対応が議論されています。
しかし、すぐに専門職員を増やすことが難しい自治体では、設備更新・故障・災害時に、「何を外部委託するか」「どの業者を選ぶか」「仕様書に何を書くか」で判断に迷うケースも少なくありません。
外部委託を有効に活用するには、価格だけでなく、処理能力・対応スピード・運転管理体制・法令対応・実績などを事前に整理しておくことが重要です。この記事では、仮設水処理を外部委託する際の選定基準と、仕様書に入れるべき項目を解説します。
👉 この記事でわかること
- 外部委託前に整理すべき条件
- 業者選定の基準と仕様書への落とし込み方
目次
技術職員不足が進む下水道維持管理。自治体だけで抱え込む時代は限界へ
技術職員がいない・少ない自治体では、発注判断が難しい
技術職員が不足すると、下水処理場での現場対応だけでなく、仕様を決める、見積もりを比較する、業者を選ぶといった発注判断も難しくなります。下水道の更新工事や設備故障、災害時には、処理量・水質・設置条件・運転管理の範囲を整理して依頼する必要があります。
条件が曖昧なまま発注すると、価格だけで判断したり、現場に合わない設備や体制を選んだりするおそれがあります。
属人化は、更新・災害・故障時に表面化する
普段は問題なく回っていても、更新工事や災害対応では属人化のリスクが表面化します。下水道分野特有の専門性の高さや作業環境から、人材確保が難しくなっており、経験者への依存はさらに強まります。前任者しか処理条件を把握していない、昔からの業者に聞かないと判断できない、処理能力や水質条件を文章化できない状態では、担当者が変わるたびに判断がぶれやすくなります。

必要なのは“外部化”ではなく“基準化された外部活用”
外部委託は有効ですが、丸投げでは不十分です。上下水道DXや業務標準化の流れも踏まえ、自治体側が、処理能力、対応スピード、運転管理体制、法令対応、実績などの選定基準を持ち、仕様書に落とし込むことが必要です。
外部委託で失敗しやすい理由は「業者選び」より「仕様書の曖昧さ」にある
処理量・水質・期間が曖昧だと、見積もりを比較できない

仮設水処理では、流量、SS、BOD、COD、pH、汚泥量、設置期間、放流先などが曖昧だと、各社の提案条件がバラバラになります。発注前の条件整理が不十分だと、価格以外の比較ができなくなります。
価格だけで判断すると、処理能力不足、設置スペースの不適合、運転管理の対象外といったミスマッチが起きる可能性があります。下水道施設では日々流入する水を止められないため、設備だけでなく、安定して処理を続けられる体制が必要です。セイスイ工業の調査でも、処理能力・スペックや迅速対応、運転管理までの一括対応が重視されています。
発注前に整理すべき5つの前提条件
仕様書を作成する前に、次の5項目を整理します。
- 対象水:下水、返流水、汚泥、雨天時流入水、工事排水など
- 処理目的:放流、場内循環、搬出前処理、既設設備の負荷軽減など
- 必要能力:日量、時間最大流量、汚泥量など
- 現場条件:設置スペース、電源、搬入経路、臭気・騒音対策など
- 対応期限:通常手配か、緊急対応か
仮設水処理・外部委託の選定基準。仕様書に入れるべき7項目
業者選定では、次の7項目を基準として整理すると、現場条件に合った委託先を比較しやすくなります。
処理能力・水質対応範囲、緊急時の対応スピード、現地調査・処理フロー設計力、機材保有・レンタル対応力、運転管理・薬品調整までの対応範囲、法令・安全・環境対応、同種・同規模現場での実績です。

処理能力・対応水質を数値で確認する
仕様書には、処理能力と対応水質をできるだけ数値で記載します。数値で示すことで、各社の提案を比較しやすくなります。
- 処理対象:下水、返流水、汚泥、工事排水など
- 想定流量:日量、時間最大流量など
- 対象水質:SS、BOD、COD、pHなど
- 目標水質:放流基準、管理目標など
- 処理方式:沈降、加圧浮上、膜処理、薬品処理など
- 変動時対応:雨天時流入、濃度変動、汚泥量増加など
対応範囲・法令・実績まで含めて比較する
仮設水処理では、機械を借りるだけでは不十分な場合があります。現地確認、処理フロー設計、機材選定、搬入・設置、配管、試運転、薬品調整、運転管理、撤去まで、どこまで委託範囲に含まれるかを確認します。緊急時の対応スピードや、機材を自社保有しているかレンタル対応かも合わせて確認しておきます。
また、下水道法、水質汚濁防止法、廃棄物処理法などの関係法令、安全管理、臭気・騒音・振動対策、住民影響も確認しましょう。特に住宅地や公共施設の近くでは、周辺環境への配慮が欠かせません。同種・同規模の現場での実績があるかも、選定基準として整理しておきます。
そのまま仕様書に使える、仮設水処理外部委託の記載項目例
業務目的・対象範囲の書き方
まずは、外部委託の目的と対象範囲を明確にします。対象水、処理量、処理期間、設置場所、運転管理の有無なども記載します。
記載例
本業務は、下水道施設の更新工事、災害、設備故障、処理能力不足等により、既設処理機能が一時的に低下する場合に、仮設水処理設備を用いて必要な処理能力を補完し、施設機能の継続を図ることを目的とする。
受託者に求める体制・実績・提出書類
受託者に求める対応範囲も明確にします。
- 現地調査を実施できること
- 対象水に応じた処理フローを提案できること
- 必要機材を手配・設置できること
- 試運転、運転調整、薬品調整に対応できること
- 処理実績、施工体制、緊急連絡体制を提示できること
- 作業計画書、処理フロー図、機器配置図、運転管理記録を提出できること
緊急時・変更時の協議条件
雨天時の流入増加、原水の変動、工期変更、既設設備のトラブルに備え、協議ルールも仕様書に入れておきます。
記載例
原水性状、処理量、工期、設置条件等に著しい変更が生じた場合は、発注者・受託者協議のうえ、処理方法、機器構成、運転条件、費用等を見直すものとする。
まとめ:担当者の経験則ではなく「基準化された外部委託」で下水道を止めない
下水道の維持管理では、技術職員の不足や属人化により、外部委託の判断が難しくなる場面があります。だからこそ、処理能力・対応スピード・運転管理体制・法令対応・実績などを基準として整理することが重要です。
基準を仕様書やチェックリストに落とし込めば、複数提案を比較しやすくなり、現場条件に合った委託先を選びやすくなります。
セイスイ工業では、下水処理場や各種工場、土木現場、災害現場などに対応する仮設水処理を通じて、現場条件に応じた処理プランの提案、レンタル機器の手配、プラント設置、試運転までをトータルでサポートしています。
基準を知る→仕様書に落とす→複数提案を比較する→適切な業者を選ぶ。この流れを整えることが、人材不足のなかでも下水道機能を止めないための第一歩です。
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