紙のBCPで終わらせない。能登地震後の下水道BCP改訂と仮設水処理による受援体制づくり
下水道BCP策定マニュアル2025年度版(自然災害編)では、単にBCPを作るだけでなく、災害時に上下水道を一体で復旧させること、外部支援を円滑に受け入れる受援体制を整えることが重要なテーマになります。
国交省の検討会資料でも、能登半島地震では、既存BCPと現場対応に大きな乖離があり、受援体制が十分に整っていなかったこと、支援を受ける際に必要な事項が整備されていなかったことが課題として示されています。また、既存の下水道BCP計画と実際の災害対応との間に大きな乖離が生じたことも報告されています。
この記事では、下水道BCPを「紙の計画」で終わらせず、災害時に下水処理を継続するための備えとして、災害時協定の締結や、仮設水処理を前提とした事前シミュレーションの考え方を整理します。
👉 この記事でわかること
- 下水道BCP策定マニュアル改訂で重視されるポイント
- 災害時に下水処理を継続するための受援体制の考え方
- 仮設水処理を活用したバックアップ体制づくりのポイント
目次
下水道BCP策定マニュアル改訂の背景|能登地震で何が課題になったのか
下水道BCP策定マニュアルは、能登半島地震の教訓を踏まえ、災害時に機能する計画へ見直されています。ここでは、改訂の背景を整理します。
能登半島地震で見えた課題|上下水道一体の視点が不足していた
災害時は、水道の再開だけでなく、使った水を流し、処理できる下水道機能も必要です。下水道が止まれば、トイレや生活排水を安心して流せず、避難所や住宅地の衛生環境にも影響します。
しかし従来の下水道BCPは、処理場・ポンプ場・管路など、施設ごとの点検・調査・応急復旧が中心になりがちでした。水道だけが先に復旧しても、排水を流せなければ生活再開は難しくなります。
被災後に早期に「水が使え、流せる状態」を戻すためには、水道部局や危機管理部局と優先復旧エリアや対応手順を共有し、上下水道を一体で考える視点が必要です。今回の改訂では、この点が重要なテーマとして位置づけられています。

下水道BCP策定マニュアル2025年度版で重視される「受援体制」とは
大規模災害では、自治体職員自身も被災し、限られた人員だけで復旧を進めることが難しくなります。そこで重要になるのが、外部支援を円滑に受け入れる受援体制です。
受援体制とは、他自治体や民間事業者などの支援を、現場で実際に活用できるようにする準備のことです。受援体制を整えておくことで、外部支援を必要とする場面でも、自治体と支援者が連携しやすくなります。
紙のBCPだけでは災害時に下水処理を継続できない理由
下水道BCPを策定していても、災害時にすぐ実行できるとは限りません。重要なのは、計画書の有無ではなく、被災時に動ける体制があるかどうかです。
リスク認識はあっても、バックアップ体制が整っていない現実
下水処理場やポンプ場が停止するリスクを認識していても、施設停止時の対応まで具体化できているとは限りません。例えば、代替処理の方法、仮設設備の活用、汚水・汚泥の一時的な受け入れ先などが決まっていなければ、BCPに「早期復旧」と書かれていても、現場で対応方針を決めにくくなります。
災害時に必要なのは、リスクを想定するだけでなく、下水処理を継続するためのバックアップ体制を準備しておくことです。
外部支援を受け入れるために必要な準備とは

大規模災害では、自治体だけで下水道機能を復旧することは困難です。そのため、他自治体や民間事業者などの外部支援を受け入れる前提で、BCPを見直す必要があります。
ただし、支援を依頼すればすぐに対応できるわけではありません。どの段階で支援を要請するのか、誰が判断するのか、どの施設を優先するのかを事前に決め、図面・搬入経路・連絡体制など、支援者が現場に入るための情報を共有できる状態にしておくことが重要です。
下水道BCPを「使える計画」にする受援体制の見直しポイント
下水道BCPを実際に機能させるには、災害時に外部支援を受け入れられる体制を、平時から整えておく必要があります。ここでは、受援体制を見直す際のポイントを整理します。
支援要請の判断基準と庁内連携フローを明確にする
災害時は、被害確認、住民対応、関係機関との調整が同時に発生します。支援要請の判断があいまいだと、下水処理の停止や衛生環境の悪化につながるおそれがあります。被害の種類ごとに支援要請の基準を定めておきます。たとえば処理場の一部機能停止、ポンプ場の停止、管路被害による流下機能の低下など、被害パターンに応じて「いつ、誰が、何を判断するか」を具体化しておくことで、発災直後の混乱下でも判断が迷いにくくなります。また、支援要請は下水道部局だけで完結しないため、危機管理部局・契約財政部局・首長部局との庁内連携フローも合わせて整理しておくことが重要です。

水道部局・危機管理部局・民間事業者との連携を事前に設計する
下水道の復旧は、下水道部局だけでは完結しません。水道の復旧、避難所の開設、道路の通行可否、電源の確保状況などと連動した対応が必要です。
水道部局とは、優先復旧エリアや重要施設を共有しておくことが大切です。また、仮設水処理や応急対応を担う民間事業者とは、災害時の連絡先、対応範囲、現地確認の流れ、必要情報を整理しておくことで、支援を受け入れやすくなります。
机上訓練・事前シミュレーションで復旧手順を具体化する
受援体制は、計画に書くだけでは十分ではありません。実際に災害が起きたときに動けるよう、机上訓練や事前シミュレーションで確認しておくことが重要です。例えば、処理場の一部系列停止、ポンプ場の停電、管路被害による排水の滞留など、具体的な被害シナリオを設定します。そのうえで、被害確認、支援要請、外部事業者への情報共有を「誰が行うか」まで明確にします。訓練を通じて、BCP上の抜け漏れや、現場で迷いやすい点を事前に洗い出すことができます。
仮設水処理で実装する「処理継続力」|本設ダウン時のバックアップ体制
下水道BCPを実効性のある計画にするには、本設設備が使えない場合でも、最低限の処理を続ける選択肢が必要です。その一つが、仮設水処理によるバックアップ体制です。
処理場・ポンプ場・管路被害ごとに想定すべき暫定処理
災害時は、処理場、ポンプ場、管路のどこで被害が起きるか分かりません。そのため、被害箇所ごとに暫定処理の方法を考えておく必要があります。
処理場の一部機能停止には、仮設設備による沈殿・脱水・ろ過などの補完、ポンプ場の停止には流入水の一時貯留や仮設ポンプでの移送、管路被害には汚水の引き抜き、仮設処理や搬送を組み合わせた対応が考えられます。
重要なのは、すべてを平常時と同じ水準で処理することだけではありません。被災状況に応じて、衛生環境や放流先への影響を抑えるために、どの処理を優先するかを整理しておくことです。
仮設設備の搬入・設置・運転に必要な事前確認項目
仮設水処理は、設備を持ち込めばすぐに運転できるわけではありません。事前に整備しておくべき現場情報は、大きく2種類あります。
ひとつは設備の搬入・設置に関する情報です。設置スペース、大型車両の搬入経路、電源の位置と容量、配管接続先、水槽・貯留設備の有無、処理水の放流先などが該当します。もうひとつは、処理の計画・判断に必要な情報です。流入水量、水質、汚泥量、既存設備の処理フローなどを把握しておくことで、必要な機材や処理方法を検討しやすくなります。
これらの情報が未整理のままだと、支援事業者が到着しても現地確認に時間がかかり、仮設設備の選定・設置・運転開始が遅れるおそれがあります。発災後にすばやく対応するためにも、現場情報は平時から整理し、必要に応じて更新しておくことが重要です。

災害時協定により復旧までのリードタイムを短縮する
仮設水処理を迅速に活用するには、平時から民間事業者との連携体制を整えておくことが有効です。災害時協定を締結しておけば、緊急時の連絡先、現地確認の流れ、対応範囲、必要情報、出動手順を事前に共有できます。発災後に一から調整するよりも、復旧までのリードタイムを短縮しやすくなります。
下水道BCPに仮設水処理を位置づけることは、単なる設備の追加ではありません。本設設備が停止した場合でも、処理停止の影響を抑え、住民生活や衛生環境を守るための処理継続力につながります。
まとめ:下水道BCP改訂を機に「マニュアル」から「実践的な受援体制」へ
下水道BCPは、計画書を作成して終わりではありません。災害時に必要なのは、被害状況を早期に判断し、外部支援を受け入れながら下水処理を継続できる体制です。
能登半島地震を踏まえたマニュアル改訂では、上下水道一体での復旧と受援体制の重要性が示されています。本設設備が停止した場合でも処理を継続するには、仮設水処理を含めたバックアップ体制が有効です。実際に、能登半島地震で被災した下水処理場の復旧対応においても、セイスイ工業の仮設水処理プラントが稼働した実績があります。
災害時協定の締結や事前シミュレーションにより、発災後の調整を減らし、復旧までのリードタイム短縮も期待できます。下水道BCPを「紙の計画」から「災害時に実際に動く受援体制」へ見直したい自治体担当者様は、ぜひセイスイ工業へお問い合わせください。
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