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水処理コラム

COLUMN

水処理に関する用語

水害時の「撤退ライン」を数値で決める:濁度基準・SS換算・濁度計の選び方

水害 濁度

豪雨が来るたびに「取水を止めるタイミングがわからない」「とりあえず様子を見てしまう」という現場は少なくありません。しかし感覚頼りの判断は、フィルター損傷・法令違反・操業停止という最悪の結果を招きます。

取水停止の判断を「感覚」から「数値」に変えるには、用途別の法的基準値・濁度からSS(浮遊物質量)への換算手法・正確な測定を支える濁度計の知識という3つの柱が必要です。本記事ではその全体像を体系的に解説します。


👉 この記事でわかること

  • 飲料水・排水・工業用水ごとに異なる「法的デッドライン」の数値と根拠
  • 濁度計の値からSSをリアルタイム推定する換算手法(検量線の作り方)
  • 水害時に数値が狂う「濁度計の落とし穴」と、正しい撤退ラインの設定方法

水害時に参照すべき濁度・SS基準値一覧

水害時の混乱中に法令集をめくる余裕はありません。まずは自社の用途別「デッドライン」を下表で確認してください。用途ごとに管理指標(濁度かSSか)が異なる点が重要です。

用途

管理指標

基準値・目安

根拠・備考

飲料水(水道)

濁度

2度以下(飲用適)/ 0.1度以下(クリプト対策)

水道法 水質基準

食品製造用水

濁度

飲料水基準と同等

食品衛生法

工場排水

SS(浮遊物質量)

200 mg/L(最大)/ 150 mg/L(日間平均)

水質汚濁防止法

冷却水(循環系)

濁度

20度以下

設備メーカー推奨

ボイラー給水

濁度

5度以下

JIS B 8223

飲料水:「2度」と「0.1度」の二重管理

水道法の濁度基準は「2度以下」ですが、クリプトスポリジウム対策としてろ過池出口を「0.1度以下」に保つ管理がより重要です。維持できない場合は、処理強化や通水停止などリスクに応じた対応が求められます。「2度なら安全」という過信は、病原生物リスクを見落とす原因になります。

排水管理:「濁度」ではなく「SS」が法的規制値

水質汚濁防止法が工場排水に規制するのは、濁度ではなく「SS(浮遊物質量)」です。現場で濁度計を使う場合は後述の換算でSSを推定・管理してください。一般排水基準は最大200mg/L・日間平均150mg/Lですが、自治体の上乗せ基準等にも要注意です。基準超過の放流は、行政指導や罰則、住民からの通報リスクを招きます。

排水管理

工業用水:設備メーカー推奨値を必ず確認

工業用水

冷却水やボイラー給水には法定の一律基準がなく、設備メーカーの推奨値が適用されます。熱交換器の閉塞やエロージョン(配管摩耗)、スケール付着を防ぐため、取扱説明書やJISを基に社内管理値を設定してください。基準を超える濁水の通水は、設備寿命を著しく縮めます

濁度からSSをリアルタイム推定する換算手法

SSの公定測定法(乾燥重量法)は結果判明に数時間〜1日かかり、数十分単位で水質が急変する豪雨時には間に合いません。そこで「濁度計の値からSSを推定するサロゲート管理」を活用します。

自社専用「濁度-SS相関図(検量線)」の作り方

濁度とSSの比率(換算係数K)は原水性状(粘土・砂・有機物等)で大きく異なります。一般値に頼らず、以下の手順で自社専用の検量線を作成してください。

  1. 平時・降雨時の同一サンプルで濁度とSSを同時測定(最低20点以上)
  2. 横軸:濁度(NTU)、縦軸:SS(mg/L)で散布図を作成
  3. 回帰直線を引いて換算係数K(SS≒濁度×K)を算出(※K値は測定方式で変動するため自社データでの設定が必須
  4. 自社のSS基準(日間平均150mg/Lや上乗せ基準等)を超えないよう社内管理値を逆算し、アラーム閾値に設定
自社専用「濁度-SS相関図(検量線)」の作り方

豪雨時は安全側に補正して推定する

粒径の大きい土砂や有機物が増える豪雨時は、同じ濁度でもSSが高く出る場合があります。平時のK値をそのまま使わず、過去のデータや設備の余裕度を踏まえ、安全側に補正して余裕のある判断をしてください。

通水再開の基準:フラッシングを忘れずに

河川の濁度が下がっても、取水口や導水管内には高濃度の泥水が滞留している可能性があります。即座に本通水せず、必ずフラッシング(捨て水)で管内を入れ替え、計測値が撤退ラインを十分下回ったことを確認してから再開してください。

「撤退ライン」の数値設定と取水停止・再開の判断基準

基準値と換算係数が揃ったら、次は「何度で止めるか」という撤退ラインの社内明文化です。これがないと担当者間で判断がブレて、手遅れになるリスクが高まります。

用途別「撤退ライン」の考え方

撤退ラインは「法的基準値÷安全率」が基本です。例えば排水(日間平均150mg/L)ならギリギリではなく、SS換算105〜120mg/Lを警戒ラインとするなど余裕を持たせます。実際の数値は、自治体の上乗せ基準・設備能力・放流先・過去のデータを踏まえて決定してください。

  • 飲料水:処理後濁度0.1度を維持できない原水濁度に達した時点で取水停止
  • 排水処理:SS換算が日間平均基準の70〜80%を超過した段階で取水量を絞る
  • 工業用水:メーカー推奨上限値の80%を超過したらバイパスまたは停止
撤退ラインの考え方

ピークカット運用:高濁度の水塊を「やり過ごす」

ピークカット運用

気象情報やダム放流通知をもとに、最も濁る時間帯の取水を避ける手法です。事前に受水槽や調整槽を満水にし、濁度がラインを超える間はポンプを停止。濁度計の上昇カーブが鈍化し始めたタイミングで再起動の準備に入ります。

撤退ライン設定の3ポイント

  1. 法的基準値をそのままラインにしない(余裕率10〜30%を必ず確保)
  2. 数値を明文化し、全員が把握できるよう現場に掲示する
  3. 年1回以上、最新の検量線データでラインを見直す

正しい数値を得るための濁度計の選び方と精度管理

根拠となる数値が誤っていれば、撤退ラインは機能しません。水害時特有の「数値は正常だが実際は濁水」という計器の罠を防ぐ知識を整理します。

測定方式の違いと高濁度域への適合性

濁度計には主に3つの測定方式があります。水害時は通常の数百倍以上の超高濁度になるため、測定範囲のカバー力が重要です。

測定方式

特性・適した濁度域

水害時の用途

散乱光方式(90°散乱)

低濁度の精密測定に強い。高濁度では数値が低く出る傾向あり

× 原水監視に不向き

透過光方式

高濁度域での直線性が良好。光の減衰量でSSを推定

○ 排水管理に適合

表面散乱光方式

数百〜数千NTUの超高濁度でも測定範囲を維持

◎ 取水口監視に最適

センサー汚染による「異常値(特に偽の低値)」への対策

泥水でレンズが汚れると、透過光方式では「異常な高値」、散乱光方式では光が遮られ「偽の低値」を誤検知します。特に後者は水害時で最も危険な罠です。「数値は低いが水が茶色い」場合はセンサー汚染のサインであり、現場の水の色の方が計器より正直です。自動洗浄がない場合は、手動洗浄の頻度を増やしてください。

目視(透視度)とのダブルチェックを徹底する

計器のみに頼らず、現場の目視や透視度計(見通せる距離を測る簡易指標)と必ず併用してください。透視度計は法的管理には使えませんが、計器の異常検知に極めて有効です。豪雨時は1時間に1回以上の目視確認と記録を推奨します。

目視(透視度)とのダブルチェックを徹底する

豪雨時の濁水対応・仮設水処理のご相談はセイスイ工業へ

「豪雨時に既存設備だけで処理しきれるか不安」「高濁度水や汚泥の処理方法を検討したい」「仮設水処理プラントを使えるか知りたい」といったお悩みがある場合は、セイスイ工業へご相談ください。

セイスイ工業では、原水や現場条件に合わせた処理ユニットの選定、仮設水処理プラントのプランニング、設置、試運転までをサポートしています。必要な期間だけ利用できるレンタル機器を組み合わせ、既存設備の補助や一時的な処理能力不足への対応を検討できます。

また、泥水・汚泥処理に対応するデカンタ型遠心分離機などのレンタル機器も保有しており、災害現場や各種工場、下水処理場などで活用されています。豪雨時の濁水・汚泥処理に備えたい場合は、現場状況に応じた処理プランについてご相談ください。

まとめ:「数値化」が水害時の設備と事業を守る要

水害時の取水管理を「感覚」から「数値」へ変えることが、設備トラブルや法令違反を防ぐ第一歩です。平時のうちに以下の3点を徹底してください。

  1. 用途別デッドラインの把握:飲料水・排水・工業用水など、自社が守るべき限界値を明確にする。
  2. 撤退ラインの明文化:濁度-SS検量線を作成し、安全率を加味した数値を現場に掲示する。
  3. 計器の罠への対策:センサー汚れによる「偽の低値」を理解し、必ず目視確認を併用する。

判断基準が整ったら、次は「ラインを超えた時」の物理的な備えです。自社設備だけで高濁度水を処理しきれるか不安な場合や、最適な撤退ラインの算出にお悩みの場合は、ぜひセイスイ工業へご相談ください。実績2650件以上のセイスイが、仮設水処理プラントの活用も含めた現場に最適な解決策をご提案します。

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