デカンタ型遠心分離機による汚染土壌分級システム

3月11日、東日本大震災のあの日から14年。
震災からの復興が進む一方、福島第一原発事故で発生した汚染土の問題は今も解決には至っていません。多くの汚染土が保管され、2045年までに最終処分が求められていますが、処分場の選定は難航し、再利用にも課題が残ります。
今、注目されているのが、汚染土を効率的に選別し、放射性物質の多い部分だけを的確に分離する技術です。本記事では、セイスイ工業の「汚染土壌分級システム」に焦点を当て、従来技術との違いや、汚染土の減容化・再生利用の新たな可能性について解説します。
目次
汚染土壌の現状と課題
2011年の福島第一原子力発電所の事故によって発生した汚染土は、大量に保管されており、その処理と再利用が大きな課題となっています。
現在の状況
- 保管量:2018年時点で約1,300万㎥の汚染土が発生
- 一時保管:大半は福島県内の中間貯蔵施設で保管中
- 最終処分:2045年までに処分場を決定する必要があるが、受け入れ先の選定が進んでいない
- 再利用の検討:放射性セシウム濃度8,000Bq/kg以下の汚染土は、道路の盛り土や建設資材としての再利用が検討されている
課題と求められる対策
- 減容化技術の開発:汚染土の体積を減らし、最終処分の負担を軽減する
- 放射性物質の低減:より高度な除去技術の確立
- 住民の理解促進:安全性に関する正しい情報の提供と合意形成
「汚染土壌分級システム」におけるデカンタ型遠心分離機の適用と技術的背景
汚染土の処理では、「放射性物質の低減」と「減容化」が重要な課題です。セイスイ工業の「汚染土壌分級システム」は、デカンタ型遠心分離機を活用し、放射性物質を含む微細粒子を効率的に分離しながら、処分量を削減できる技術です。
仕組みと特長
放射性セシウムは、主に2μm以下の粘土粒子に吸着し、2〜10μmの微細粒子にも一定量が保持されます。しかし、10μmを超えると吸着量が急減し、75μm以上の砂質粒子にはほぼ固定されません。この特性を活かし、セイスイ工業のシステムでは、20μm未満の細粒分のみを選択的に分離し、20〜75μmの粒子を再利用可能な土壌として確保できます。
これにより、以下のような効果が期待できます。
- 放射性物質の低減:セシウムを多く含む細粒分を分離し、残る土壌の放射性物質濃度を下げる
- 減容化:汚染土の処分量を削減し、最終処分場の負担を軽減
- 資源の有効活用:再利用可能な土壌を確保し、環境負荷を低減

従来技術と「汚染土壌分級システム」の比較
汚染土の減容化と資源再生を進めるため、分級技術の選定が重要になります。従来の技術では、比較的大きな粒子まで処分対象となっていましたが、セイスイ工業の「汚染土壌分級システム」を活用することで、より細かい粒子を効率的に分離し、分級サイズの調整も可能になります。これにより、再生可能な土の割合を増やし、最終処分量を大幅に削減できます。
デカンタ型遠心分離機の利点
再生可能量の増加
- 20〜75μmの粒子も再利用できるため、再生可能な土壌量が増加
最終処分量の削減
- 20μm未満の細粒分のみを処分対象とすることで、処分量を大幅に削減
- 最終処分場の負担軽減と2045年の最終処分計画の実現性向上
コスト削減
- 最終処分量の減少により、処分コストが削減
放射性セシウムの高効率除去
- 1回の分級で20μm未満の細粒分混入率を30%以下に抑制
- 3回の分級で非放射性セシウム総量の90%以上を低減
- 安全性を確保しながら再生土壌の有効活用が可能

産業応用と将来展望
本技術は放射性物質の除去だけでなく、さまざまな分野での活用が可能です。
主な応用分野
- 重金属を含む汚染土壌の処理:鉛やカドミウムなどの有害物質を含む土壌の浄化に貢献
- 工場排水や産業廃棄物処理:汚泥の分級処理により、再利用可能な資源と不要な廃棄物を効率的に分離
- レアメタルの回収:電子部品や産業廃棄物から貴重な金属成分を回収し、資源の有効活用を促進
- 建設現場やシールド工法で発生する泥水処理:泥水中の細粒分を効率的に除去し、再利用できる清水を確保
- 重金属を含む汚染土壌の処理:鉛やカドミウムなどの有害物質を含む土壌の浄化に貢献
- 工場排水や産業廃棄物処理:汚泥の分級処理により、再利用可能な資源と不要な廃棄物を効率的に分離
- レアメタルの回収:電子部品や産業廃棄物から貴重な金属成分を回収し、資源の有効活用を促進
- 建設現場やシールド工法で発生する泥水処理:泥水中の細粒分を効率的に除去し、再利用できる清水を確保

これらの応用により、環境負荷の軽減やリサイクル率の向上が期待されます。また、処理コストを抑えつつ、高効率な土壌再生や資源回収を可能にする技術として、今後さまざまな産業での活用が進むと考えられます。
まとめ
デカンタ型遠心分離機を活用した「汚染土壌分級システム」は、従来技術より効率的に減容化と資源再生を実現します。本システムの導入により、以下の成果が期待されます。
- 再生利用の促進:20〜75μmの粒子を有効活用し、再生可能な土壌量を大幅に増加
- 最終処分量の削減:20μm未満の細粒分のみを処分対象とし、処理負担を軽減
- 放射性物質の低減:3回の分級で非放射性セシウム総量の90%以上を低減
- コスト削減:最終処分量の減少により、処分コストを低減
この技術は、環境負荷を抑えつつ、汚染土の処理と資源活用を両立する有効な手段です。今後は放射性物質の除去にとどまらず、産業廃棄物や重金属汚染土の処理など、幅広い分野での活用が期待されます。